AIが導く「新たな時代」の夜明け 日本が追いつくには
──AIの未来にはとてもワクワクしますが、日本企業の営業組織におけるAI活用は、まだまだ課題が多いと感じています。グローバルと比較して、日本の営業組織におけるAI活用の現状をどう見ていますか?
Cohen 日本の営業組織における生成AI活用率は30%弱と、他国に少し後れをとっているのは事実です。しかし、まだ3年足らずの新しいテクノロジーだと考えれば、30%という数値は決して悲観するものではありません。私は、日本の市場に非常に期待しています。
──日本が他国に追いつき、競争力を高めるため、まずは何から取り組むと良いのでしょうか。
Cohen まずは、ぜひAIをリサーチに使ってほしいですね。そうすれば、AIの回答が、顧客との会話に活用するうえで非常に徹底的かつ適切であることを実感できるでしょう。
また、多くの営業担当者が煩わしさを感じるリサーチ業務をAIが肩代わりすることで、営業担当者が本当にやりたい、より人間にフォーカスした仕事に集中するのを助けてくれます。とにかく使い始めること、実験することが大事です。
AIによる変化は、過去100年間に経験したあらゆる技術変革と似ています。オンプレミスからクラウドへ、そしてソーシャルメディアへと移行した時代を振り返ると、テクノロジー分野でいかに大きな変化が繰り返されてきたかがわかります。新しいテクノロジーへの適応には時間がかかりますが、一度定着すれば、パフォーマンスと生産性に計り知れない影響を与えるでしょう。私たちは今「営業生産性の向上」という新たな時代の“夜明け前”にいるといえます。

変革を勝ち抜く「リーダーの条件」
──大変革を迎えている今、営業マネージャーには、どのようなリーダーシップが求められるのでしょうか。
Cohen 最高のリーダーは「営業現場の最前線で何が起こっているかを知りたい」と思う鋭い感受性を持っています。スプレッドシートの数字だけを眺めているのではなく、常に現場の「生の声」に耳を傾けているのです。
私がLinkedInで市場リーダーになった時の経験をお話ししましょう。当時、私たちは競合企業を過小評価してしまい、競争にさらされる状況に陥りました。この状況を変えるため、私は営業チームに顧客との関わり方を変えるように求めたのです。
まず、すべての見込み客との会話で「LinkedInのほかにどのような代替案を検討していますか」とたずねることを義務づけました。次に、マネージャーやディレクターにも顧客と話す時間を増やすように求め、「顧客とのミーティングを週○回実施する」という具体的な数値目標を割り当てました。
これらの施策により、営業担当者から私まで、全員が顧客との会話の数を増やし、市場や顧客についてより詳細な理解を得ることができました。結果として迅速に方向転換でき、市場リーダーの地位を取り戻すことができたのです。
現在の市場は急加速で変化しています。リーダー自らが積極的に顧客とのミーティングに参加し、顧客や市場の状況を知り、成功するために営業チームが必要としているものを理解しようとする。そうした「現場密着型」のリーダーが求められていますし、そうしたマネージャーがいる組織は、どのような変化に直面しても必ず成功するでしょう。
──最後に、日本の営業担当者に向けて、メッセージをお願いします。
Cohen ぜひ好奇心を持ち続けてください。そして、忍耐力と回復力を培ってください。営業活動をしていると、打ちのめされたような気分になることもありますね。しかし成約したとき、すなわち顧客の問題を解決したとき、非常に大きなやりがいを感じられる仕事でもあります。日本の営業組織の皆さんとともに、そうした挑戦をできることを願っています。
