AIが加速させる、グローバルで輝く日本の「武器」
──反対に、AI時代のグローバル競争において、日本の営業組織が持つ強みは何でしょうか。
増岡 日本には、建物や食、公共交通機関など、あらゆるものが丁寧で、整理され、洗練されているという非常に強いアドバンテージがあります。これは、日本人の真面目さや高い品質へのこだわりが体現されているものです。海外のメンバーと話す中で、多くの海外メンバーが日本のことを興味を持ち、好んでくれている要素は、安全性や円安以外にもこのような要素も大きいように感じます。
この「丁寧で整理されたものをつくる力」に、AIが持つスピードや変化への対応力を掛け合わせることで、今まで少数のお客様にしか届けられなかった精緻な提案や顧客体験が、より多くのお客様に届けられるようになります。
──日本の慎重さや丁寧さといったカルチャーと、AIによるスピード感が融合することで、日本の営業力はグローバルで抜きん出る可能性があるのですね。
増岡 そうですね。この「精緻な品質提供のスケールアップ」こそが、AI時代における日本の大きな強みになるはずです。この変革を加速させるためには、業界全体でグローバルな知見を共有し、ローカルに合わせた「実践の知恵」を積み上げていくことが不可欠です。
──AI活用が進むことで、顧客との関わり方、ひいてはマーケティングやセールスのフレームワークそのものも変わっていくように感じます。この変革期において、HubSpot Japanはどのように日本の企業をリードしていこうとお考えですか?
増岡 おっしゃる通り、AIの浸透は、顧客との関係性そのものを変えます。マーケティングやセールスも、顧客を中心とした新しいフレームワークへの移行が求められるでしょう。
たとえばHubSpotでは、リードが従来のブログ中心からYouTubeなど多角的なチャネルにシフトしていることや、AIによるコンバージョンといった変化を受けて、新たなマーケティングのプレイブックである「Loop(ループ)」をグローバルで発表しました。
Loopは「まずは実践してみて、フィードバックを受けながら変えていく」ことが前提です。この新しいフレームワークをHubSpot Japan自らが実践し、日本市場に合わせて増大させていく。さらに、その知見を共有していくことで、多くの日本企業の参考となるモデルケースをつくることができると考えています。

増岡 その過程では、顧客への提案のあり方も大きく変わる可能性があります。お客様が望むのであれば、PowerPointの提案書はなくなるかもしれませんし、動画やポッドキャストでの提案に変わっていくかもしれません。
グローバルで得た実践知と、日本市場に合わせた具体的な活用ナレッジを包み隠さず共有していくことが、日本市場全体の営業組織の変革に寄与できると考えています。これが、HubSpot Japanが担う大切な役割のひとつだと考えています。
──最後に、日本の営業組織の読者に向けて、メッセージをお願いします。
増岡 私は、営業という職種で働いていることを心から誇りに思っています。課題を解決する手段は世の中に年々増えていっていると思いますが、お客様と一緒に「これが解決すべき課題だ」というものを見つけ出し、お客様と同じベクトルに向かえるようにすることは、営業担当者の腕の見せどころだと思います。営業はとてもアーティスティックな仕事なのです。
こうした活動が、AIによってさらに多くのお客様に、より深く提供できるようになります。営業にとっては非常に楽しい世界が待っています。ぜひ好奇心を持ってテクノロジーに触れ、使ってみる、知っていくということを続けていただきたい。同時に、お客様のことも好奇心で深く理解していく。このセットを続けられれば、営業というキャリア自体がより楽しく、誇らしいものになっていくと思います。この変革期を乗り越え、日本の営業職のキャリアがさらに輝く未来を、ぜひ一緒につくっていきましょう。

──グローバルと日本の両面から、AI時代の営業組織に必要な項目と今後の展望をお聞かせいただきました。本日はありがとうございました!
