日本の営業組織がぶつかる「壁」 AI活用を阻むふたつの課題
──Cohen氏の取材を踏まえて、日本の営業組織を率いる増岡さんはどのように感じましたか?
増岡 Davidが挙げた共通項、とくに好奇心と成長マインドセットには非常に共感しています。私自身、HubSpotに入社を希望される方を面接する際にも、好奇心の強さや成長意欲を重要視しています。
また、私自身も、お客様と会話することが大好きなんです。以前、営業担当者とマネージャーの都合がつかない日に、私ひとりでお客様を訪問し、比較検討中の懸念点やリクエストを直接おうかがいしたこともあります(笑)。
部下任せにせず生の声を直接聞くことは、営業のリーダーとしても非常に重要な要素だと考えています。私も可能な限りお客様と直接お会いする時間をつくることを意識しています。
──日本の営業組織におけるAI導入の現状を踏まえ、何が壁となっていると考えますか?また、その壁を乗り越えるために取り組むべきことは何でしょうか?
増岡 日本は、他国に比べて「慎重である」という独特なカルチャーがあるのは間違いありません。これは安全性というアドバンテージを生む一方で、テクノロジーの進化やビジネスの急速な変化に追いつくうえで、足かせになっている側面も否めません。
また、日本はそもそもCRMの導入率が約37.2%と、グローバルに比べて低いのが現状です。AIを導入しても、それを活用するためのデータが整備されていなければ、活用は進みません。まずはCRMの活用度を上げることが最初のミッションです。
そのうえで、AI活用にあたり日本企業に不足しているのは、最初の一歩を踏み出す「実践」の意識です。たとえば、既存の業務プロセスの中にAIを組み込んでしまうのも有効ですね。HubSpotの営業組織では、AIを積極的に使っており、お客様のリサーチや簡易的な説明資料の作成、さらには社内でのトップパフォーマーの商談内容の分析など、AIを活用した情報共有が活発に行われています。上層部から現場のメンバーまで、全員が「AIを使えばもっと楽になる」「もっと早く適切な提案ができるようになる」という意識を持っています。このようにAIを使うハードルを下げることで、AIに対する抵抗感を解消できるでしょう。
とくに、日本語はひらがな、カタカナ、漢字のバリエーションが豊富で、AIにとっては取り扱いが特殊な言語です。そのため、以前は日本語のアウトプット精度に課題を感じる瞬間もありました。しかし、現在はテクノロジー自体が急速に進化を続けているため、日本語でのアウトプット精度が飛躍的に向上しています。わずか数ヵ月でも、AIの進化は目覚ましいものを肌で感じており、案件状況をサマリーして把握することは私自身も毎日活用しています。Davidも言っていたように、小さくても良いので、とにかく始めてみることが非常に重要です。
