月間で約500時間の業務削減 「営業のあるべき姿」をAIが支援
田口(ナレッジワーク) 本日はパーソルキャリアの山田さん、KDDIの森さんのおふたりをゲストにお迎えしました。最初のテーマは「AI×先進企業の実践例から読み解く革新の今」です。パーソルキャリアの山田さんは、「Forbes JAPAN NEW SALES OF THE YEAR 2025」においてセールスイネーブルメント賞を受賞された「HiPro(ハイプロ)」における営業改革について、KDDIの森さんには、2年前からリードされている営業DXの苦難や成功について、それぞれおうかがいしたいと思います。
山田(パーソルキャリア) セールスイネーブルメント賞という立派な賞をいただき、少し震えています(笑)。そもそもなぜ、副業・フリーランスのプロ人材支援サービス「HiPro」が営業変革に踏み切ったのか。その背景には市場環境の変化、とくに競合の増加があります。従来の営業スタイルでは差別化が難しく、営業のあり方そのものを見直す必要に迫られました。
4年をかけて変革を進める中で、まずはマネージャー層を巻き込み、バリュープロポジションを再定義しました。これを軸に、営業戦略、組織編成、指標を変更し、仕組みとして全体を統合していく過程で、セールスイネーブルメントを本格化させていったのです。
正直なところ、変革には大きな反発もありました。長年積み重ねた“我流”が根強く残り、正義と正義がぶつかり合う。この状況がいちばん厄介でしたね。こうした抵抗感を乗り越え、変革を現場に定着させるために、「営業のあるべき姿」を支援するツールとして生成AIを導入したのです。
右:パーソルキャリア株式会社 doda事業本部 タレントシェアリング事業部 HiProCX統括部 エグゼクティブマネジャー 山田 遼平氏
中央:KDDI株式会社 ビジネスデザイン本部 企画統括部 ビジネストランスフォーメーション戦略室長 森 千鶴氏
左:株式会社ナレッジワーク レベニュー 執行役員VP 田口 槙吾氏
営業プロセスの中にAIを組み込む 現場浸透を進めた工夫
山田 生成AI導入のポイントはふたつあります。まず、現場主導で導入を進めたこと。そして、あえて開発レベルを抑えることで複雑な要件定義やAPI連携を避け、短期で成果を出すことを優先したことです。
加えて、画面遷移を減らす、直感的に使える応答型にするなど、現場の動線に即した改善を地道に積み重ねたことが、現場浸透の最大の鍵となりました。これにより、月間で約500時間の業務削減効果が出ています。
田口 現場浸透を支える動線設計はとても重要ですね。やはり、従来から活用していたSalesforceの中にAIを組み込んでいったのが、ひとつのキーだったのでしょうか?
山田 そうですね。加えて、営業プロセスの中にAIを使うタッチポイントを組み込むことも重要でした。
セールスイネーブルメントの一環として、商談前の準備、商談中の対応、案件獲得後の対応、そして面談時の対応など、営業プロセスに沿って営業の標準活動を定めたハンドブックをつくり、その中の重要なファクターのひとつとして「AIを使う」ことを盛り込んだのです。評価制度やMBO(目標管理制度)もハンドブックを基に設定されるため、必然的に、組織全体のAI活用が進みました。
田口 なるほど。まずは標準的な営業行動を定義し、そこにAIを実装する。こうしたグランドデザインがなければ、現場には浸透しないのですね。
山田 はい、そもそもだと思います。

