ZVC JAPANは、さくらインターネットが、2024年6月に社内の一部電話システムをクラウドPBXサービスである「Zoom Phone」に刷新したことを発表した。

導入の背景
さくらインターネットは日本のインターネット黎明期に創業し、レンタルサーバーやクラウド事業などを展開している。Zoom Phone導入前、同社の従来のカスタマーセンターでは、耐用年数に制約があるオンプレミス型機器を利用しており、またデータセンターでは、ハードウェア型PBXが更新時期を迎えていた。
ハードウェア面の課題に加え、コロナ禍を機に電話オペレーターの在宅勤務が標準化されたことで、スタッフの自宅環境によって通話品質が左右されるようになった。その結果、顧客満足度が低下し、品質低下時には原因特定も困難だった。こうした背景から今後の電話環境の方向性を模索していたところ、ベンダーの双日テックイノベーションからZoom Phoneを紹介された。
さくらインターネットでは電話システムのリプレイスにあたり、「通話品質の向上」と「サポート窓口のトールフリー番号(0120番号)の継続利用」を必須要件とし、導入前には PoCで、通信が不安定な環境でのZoom Phoneの高い通話品質を確認した。また、KDDIが提供する「Cloud Calling for Zoom Phone」と「フリーコール」を組み合わせて利用することで、従来の電話番号を継続使用できるようになった。
また、すでに Zoom Meetingsを全社で使用していたことから、音質や画質の高さ、UIへの信頼感も、Zoom Phone導入の後押しとなった。
加えて、Zoom Phoneの通話データの蓄積・活用の幅広さも導入の魅力だった。標準搭載の通話録音機能は容量無制限で、Zoom側のクラウドにデータが保存される。以前はストレージ容量の上限に達すると手動でデータ移行が必要だったが、その手間も不要になり、現在は録音データをスタッフの教育やサービス品質向上に活用している。
導入の効果

PoCを経て、さくらインターネットはZoom Phoneに移行した。移行後は社内でも通話品質が高く評価され、オペレーターへのアンケートでも「音質が良くなった」「通話が途切れなくなった」などの回答を得た。
また、従来の課題であった音質低下の原因特定も「通話品質ダッシュボード」により解消された。通話記録ごとに品質を示すMOS(Mean Opinion Score)値が表示され、低品質とされる3.5以下の場合は発信・着信それぞれのビットレートやパケットロス、ネットワーク遅延などが数値で可視化されるため、原因の特定が容易になった。
さらにZoom Phoneは他社ツールとも連携可能なため、さくらインターネットでは Salesforceと連携し、顧客情報の電話番号をクリックし発信できる機能を活用している。これにより、アプリ切替や電話番号のタッチミスによるオペレーションコストが削減され、業務効率化につながっている。
さくらインターネット クラウド事業本部 カスタマーリライアビリティ部長 大西圭一氏は、「Zoom の有償プランに標準搭載されている生成 AI『Zoom AI Companion』による通話の文字起こしと要約を顧客データと紐づけ、音声からの『感情分析』が可能になれば、カスタマージャーニー全体の改善にもつなげられるかもしれない」と語る。