「直販モデルの限界」とは? 企業が直面する3つの構造的課題
パートナープロップのVP of Sales(営業統括)を務める磐崎氏は、冒頭で「売り方の再考が求められている」と述べ、現在の直販営業組織が直面している課題について、具体的なデータを示しながら説明した。

株式会社パートナープロップ VP of Sales(営業統括)磐崎友玖氏
大学在学時、2018年8月に株式会社Magic Momentに創業参画、BtoB SaaS事業のマーケティング・インサイドセールス・セールス、BPO事業のマネジメントなどを幅広く担当、シリーズB資金調達(累計22.4億円)まで事業拡大を経験。数々の営業組織を支援。その後、2024年10月に株式会社パートナープロップにVP of Sales(営業統括)として参画、アライアンス開拓・直販営業組織立ち上げ・マーケティング・広報などを幅広く推進。
まず磐崎氏は、採用面での課題を挙げ、厚生労働省のデータ(※1)を引用し、全職種の平均有効求人倍率が1.26倍であるのに対し、営業職は2.09倍と突出して高い状況にあることを指摘した。
「営業職は、ほかの職種と比べてもとくに採用が難しい領域になっています。多くの企業が人材不足に悩み、人件費の高騰にもつながっている背景には、『人がいない』という根本的な問題があるのです」(磐崎氏)
さらに深刻なのは、人材育成における課題だ。営業組織の運営に関するデータ(※2)によると、営業組織運営に「非常に深刻」または「ある程度深刻」な課題を抱えている企業が7割を超えており、その最大の要因が「新人教育ができていない」ことだという。磐崎氏は「満を持して採用をしても、その人を戦力化することが難しく、営業組織の運営そのものに課題がある」と指摘する。
このような営業の採用・育成の課題に対し、多くの企業がマーケティング投資で売上を伸ばそうとしているが、そこにも新たな問題がある。民間企業の調査によると、日本の総広告費は7.6兆円と3年連続で過去最高を更新している一方で(※3)、「リード獲得単価(CPA)が高騰している」と回答したマーケティング責任者が約半数に上るという(※4)。つまり、マーケティングコストが肥大化し、ROIが悪化しているという厳しい状況に企業は直面しているのだ。
これらの課題が複合的に作用した結果、多くの企業が「キャズムの壁」を突破できずにいるという。

イノベーター、アーリーアダプターと呼ばれる層は、自ら問い合わせをしたり、展示会でブースを訪れたりと購買や情報収集においてアクティブな行動をとるが、マジョリティ層はそもそも外部に積極的に出ていかないケースが多い。
「たとえば、地方の企業は物理的な距離もあり、そもそも接点を持つのが難しい層です。しかし、地方で営業活動を行う人材を新たに採用するのは現実的に厳しい。また、デジタルマーケティングで広告費を投下したからといって接点が持てるわけでもなく、費用対効果も悪化していく一方です」(磐崎氏)
磐崎氏は「これまでの直販の営業組織、営業モデルだけでは企業の継続的な収益成長が非常に難しくなっている」と、直販モデルの限界を明確に示した。