営業で感じた「もやもや」 カスタマーサクセスの道へ
向井 今日はHubSpotでカスタマーサクセスの立ち上げを担った川村さんと、カスタマーサクセスにおける課題や、営業との連携における可能性についてお話していきたいと思っています。まずは川村さんのキャリアについて教えてください。
川村 学生時代はアメリカに留学していたのですが、キャリアのスタートは日本企業のネットワークエンジニアでした。次のキャリアが、米国に本社を持つブライトコーブという動画配信の会社です。営業に挑戦しようとしたのですが、最初は社長に「無理」と言われてしまって(笑)。まずはカスタマーサポートとしてプロダクトの勉強をするよう言われました。
その後、本社にも交渉してもらい、アカウントマネージャー(営業職)を2年半ほど経験。担当業種はIT、製造、人材、製薬などほぼすべての業種を、企業規模で言うと伝統的な超大手企業からスタートアップまで非常に幅広く担当しました。そして、マーケティングの仕事にも携わるようになります。

ネットワークエンジニアとしてグローバルネットワークの運用からキャリアをスタートし、その後米国SaaSのBrightcoveにてカスタマーサポートやマーケティング分野での経験を積む。またアカウントマネージャーとして大手企業を中心とした120社の既存顧客を担当。日本にカスタマーサクセスが広まる以前から、カスタマーサクセス業務に従事。HubSpot Japan株式会社では日本初のカスタマーサクセスマネージャーとして入社しチームを立ち上げ、その後Principal CSMおよびチームリードを歴任し、累計500社以上のCRM構築・運用支援に携わる。ANATAE株式会社でVP, Customer Successとしてカスタマーサポートを含むCS組織・運用・CRMを含むGTMインフラの構築を担当。現在はTSUMAMI CONSULTINGの代表として、カスタマーサクセスを中心とした支援活動を提供。スタートアップから大手企業まで幅広いクライアントに対し、カスタマーサクセス全般の支援や、CRMのゼロからの構築・最適化支援を得意とする。並行して日本カスタマーサクセス協会レビューボード(有識者委員)として、CSM育成・評価プログラムの策定に携わる。
向井 その後、HubSpotに転職されたそうですね。きっかけを教えてください。
川村 当時は営業として120社ほど担当していたのですが、高い数字目標に向かって営業活動を加速させなければならない瞬間もあり、自分から見るとお客様への活用支援が十分とは言えない状況に少しもやもやしていました。そんなときにHubSpotと出会い、初めて「カスタマーサクセス」という言葉・職種について知りました。2016年ごろのことです。
当時のHubSpot日本法人はこれからカスタマーサクセスを立ち上げるタイミングでした。そこで求められていた「ITの知識があり、顧客折衝ができ、マーケティングの基礎をわかっていて、英語が話せる」という人材はマーケットにどれだけいるのだろうと考え、自分がかなり貴重な存在だと気づきました(笑)。もやもやに対する答えを見つけることにもなるのではないかと、HubSpotでカスタマーサクセスの立ち上げに挑戦することを決めたのです。
向井 2016年当時と言えば、カスタマーサクセスという言葉が日本ではまだ浸透していなかった時期ですよね。どのように組織を立ち上げていかれたのですか。

約20年、IT業界において中小から大企業のB2Bの営業領域の職務に従事し、CxO等エグゼクティブに対するビジネスも多く経験。2019年に米App Annie日本法人のカントリーマネージャーに就任し、日本法人全体のビジネスを牽引。2020年7月よりウェルディレクション創業。B2Bセールスのアドバイザーとして上場企業からスタートアップまで、広く営業やマーケティングの側面から企業のビジネス成長に貢献している。2023年社会構想大学院大学実務教育学修士号取得。営業の暗黙知を学術的に形式知化するための専門職研究を行う。
川村 まさに、手探りの状態でした。ただAPACの連携があり、シンガポールのディレクターが心配してくれて。9時から18時までiPadをつなぎっぱなしでサポートしてくれたり、毎月シンガポールに足を運んで直接教えてもらったり。半年ほどして「もう川村さんは大丈夫だから」と言われて出張できなくなりましたが(笑)。
向井 現在は、独立されていらっしゃいます。きっかけはあったのですか。
川村 正直に申し上げると、在籍中の6年半で3回ほど転職を考えたんですよ。ただ、いろいろ話を聞いたり調べたりしていると、ミッション、プロダクト、働く人、どれをとってもHubSpotは良い会社だな、と思いとどまってしまう。
ただ、独立したいという考えは持っていたので、CEOが変わり、会社が新しい方向に向かっていくタイミングで、独立することにしました。