コロナ禍で学生時代を過ごした新入社員の「普通」
新年度、多くの営業現場では新たなメンバーを迎え、緊張と期待が入り交じった空気が流れているのではないでしょうか。マネージャーや先輩社員としては、新入社員が1日も早く活躍できるよう、研修やOJTに工夫をこらしていることでしょう。
そのような中、情報としては知っていた「今の新入社員たちが育ってきた環境の違い」をあらためて実感しつつあるのではないでしょうか。
2025年4月入社の新卒社員の多くは、高校2年生の終わりごろからコロナ禍を経験しています。大学生活でもオンライン授業が実施されるなど、オンラインコミュニケーションのツールには慣れています。
参考:「2025年度(令和7年度)新入社員のタイプ」(産労総合研究所)

一方で、このような背景から、上の世代が「当たり前」だと思っていた対面コミュニケーションにおける「雑談力」や「間の取り方」「表情のつけ方」など、無意識のうちに行っていた細やかなスキルを磨くチャンスが少なかったのです。
だからといって「今どきの若者とどう付き合えばいいのかわからない」と嘆く必要はありません。彼らの「スタート地点」を正しく理解することで、マネージャーや先輩社員の接し方や教え方も、さらに効果的なものにできるのです。
「隣に座って、見て学んで」ではモチベーションが上がらない
営業職にかぎらず、新人教育において長らく使われてきたのが、「先輩の隣で実務を見て学ぶ」スタイルです。OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)は、マネージャー、先輩社員にとってなじみ深い「当たり前」だったのではないでしょうか。
ただ、人手不足が進む中、営業現場は以前と比べ、余裕がありません。数ヵ月間、あるいは半年、1年以上にわたって「何もしゃべらなくていいから隣で見てて」と言える現場はもはや存在しないでしょう。
また、コロナ禍の学生生活では「受け身で授業を受ける」よりも「自ら学んで調べてレポートを書いて提出する」といった自律的な行動を求められたこともあり、「座ってて」「見てて」と受け身でいることを求められると、「なんのために?」「意味あるの?」「タイパ悪くない?」と疑問に思ってしまうという特性もあります。
「このやり方は無駄が多く、やる意味がわからない」
「先輩が行っている作業の流れが理解できない」
「どこをまねしたり、スキルを身につけたら成長できるのか、わからない」
疑問を吐き出させないと、モチベーションもスキルも上げづらい悪循環に陥ってしまうこともあります。
一方、マネージャーや先輩社員の側も
「そもそも忙しくて時間がとれない」
「どう教えたらいいかわからない」
「自分のやり方が正解かどうかわからない」
と、戸惑いや悩みを抱えてしまうことでしょう。
OJTを中心とした「見て学ぶスタイル」ではノウハウの「言語化」がされにくいため、教わる側・教える側の双方にとって再現性の低い、属人的な方法になってしまうことが多いのです。