「言葉のTPO」を意識できていますか?
新入社員研修が終わると、営業やカスタマーサクセスの現場にデビューする企業もあることでしょう。この時期に、マネージャーや先輩社員として気になるのが「お客様とのコミュニケーション、ちゃんとできているかな?」という点。
一斉研修で言葉づかいについてしっかり学び、現場のマニュアルやトークスクリプトを頭に入れたはずなのに、お客様からの反応が今ひとつ。そんな場面に直面したマネージャーや先輩社員も多いのではないでしょうか。その原因は、「言葉のTPO」かもしれません。
新人がもっとも気をつけるべきなのは、学んだ言葉を適切な場面かつ、適切な意味を伝える用途で用いること。その点をおろそかにしてしまうと、ビジネスでよく使われる言い回しでも、相手に違和感を与えてしまうことがあるのです。
今回は、実は「お客様に嫌われるかもしれないキーワード」に注目してみましょう。

「ありがとうございます」は万能じゃない?
ビジネスの基本中の基本とも言える「ありがとうございます」。感謝の気持ちを伝えることは大切で、ビジネスコミュニケーションにおいてもっとも多く使われる言葉です。「ありがとうございます」は一見、どこで誰にどのように伝えても万能と思いがちですが、使うタイミングや使い方を間違えると、逆効果になることもあるのです。
たとえば、
- 質問に対する回答の枕詞が「ありがとうございます」
- お客様からのクレームに対して「ありがとうございます」
- コミュニケーション上の誤解について指摘を受けているのに「ありがとうございます」
- とくに意味がなく語尾のように使っている「ありがとうございます」
このように、どんな場面でも反射的に「ありがとうございます」と言ってしまうと、「ありがとうございます」の価値が損なわれてしまい、逆に「誠意が感じられない」「自分の話を聞いて、きちんと理解してくれていないのでは?」と受け取られてしまうことがあります。
こんなことはありませんか。
「うちの会社では●●、××といった点が課題なんだよね」と、お客様の課題や実情をお話しいただいた際、 「ありがとうございます」と言ってしまう。
TPOを考える際は、「言葉づかいの丁寧さ」をいったん横に置き、友達との会話だったらどうだろうか? と想像してみましょう。「私、今、●●、××に困ってるんだよね」と話してくれたことに対し、「ありがとう」と感謝するでしょうか?
たとえば「話しにくいことを、勇気を出してわざわざ私に打ち明けてくれてありがとう」といったように「何に対して」の「ありがとう」かがはっきりわかる「ありがとう」であればTPOとして適切です。
ビジネスコミュニケーションにおいても、相手に共感したうえで「そんなに大切なことを、心を開いてお話しくださって、本当にありがとうございます」と真意をお伝えできるならばもちろん大丈夫です。ただ、きちんと理解できていない状況の中で、「ありがとうございます」というひと言だけを挟んでしまうと、お客様の話のストーリーの流れを止めてしまい、ぎこちない感じにも受け取れるのではないでしょうか。
共感を示す相づちを打って一呼吸置いてから、「ちなみに、それはいつからなのですか?」などとさらに深く掘り下げる質問を付け加えてみると、相手の話を遮らずに長く話してもらい、会話内容を深堀することが可能です。お客様からの信頼を高めつつ、効果的にヒアリングを進めていきましょう。
【ポイント】
「ありがとうございます」のかわりに、「ご指摘いただき助かります」「教えていただいて勉強になりました」など、状況に応じて気持ちが伝わる言葉に言いかえてみましょう。先輩のトークを録音・録画して、先輩のトークとお客様の反応をセットで確認することにより「どんな言い回しで効果的なヒアリングにつながっているのか」を見つけてまねしてみるのも効果的です。