「営業」が変わると、組織やプロダクトも大きく変わる
──note「2か月でSFAを入れ替えて営業生産性160%を達成した、マーケティングドリブンな営業改革の話」を拝見し、お話をうかがってみたいと思っていました。SalesZineということで、三浦さんがこれまで営業にどうかかわってきたのか教えてください。
新卒のキャリアは営業です。サイバーエージェントの子会社で、モバイルサイトの受託開発を提案していました。企業リストに対して1件ずつコールドコールをしていくというイケてないスタイルです(笑)。ただ、幸運だったのは「営業の神」のような上司に出会えたこと。活動量や提案について厳しく指導されるというよりは、営業の本質的なこと──、人を巻き込んで成果を出すとはどういうことなのかを教えてもらいました。

三浦慶介さん
新卒でサイバーエージェントに入社し、子会社の立ち上げに参画。のちモバイルゲームの責任者としてヒットを創出し、子会社の取締役に就任。リヴァンプで新規事業開発やDXの支援を手掛けたのち、サイバーエージェントにてマーケティング部署の立ち上げを担当。グロース上場企業のスパイダープラスでは執行役員としてマーケティング、営業企画、商品企画などの責任者を歴任。現在は事業開発支援のかたわら、事業人材コミュニティ「グロースドライバー」を運営。
たとえば、検討中のクライアントに「いかがですか?」とおうかがいを立てるのは二流の営業のやり方だと。そうではなく、相手が発注できない理由をすべてつぶし、「発注するしかない状態」にしていく。つまり、「すべて逆算思考で動け」ということを教わりましたし、それを実現するための、コミット力やマインドについても学びました。一方で、営業がどんなに頑張ってもサービスが良くないとダメだなという点もそのときに感じたことです。
直近だと、前職のバーティカルSaaSの企業で企画職として営業改革に取り組みました。改革では手始めに、全国で営業同行を実施。執行役員の立場だったのですが、担当者と一緒に福岡出張に行き、1日5件の商談を回ったり、リスケになって空いた時間で3ヵ所の飛び込み営業を行ったりしました。飛び込みから1件受注するというミラクルも。
「企画」というと聞こえが良いですが、現場をよく理解して再現性の高いものをつくるのが仕事だと考えていて、大手の複雑な取引では自分がフロントに立つこともありました。営業企画というよりは、営業を良くする何でも屋さんのような立場でした。
──三浦さんに、営業改革のポイントをうかがっていければと思います。
そもそも、営業を変えることで、組織やプロダクト、会社、あらゆることが変わっていくんです。
まずは戦略が必要です。営業における戦略とは、「誰に/何を/いくらで/どのように売るのか」。抜け落ちやすいのは「How much」です。しかし、事業について考えるとき、「いくらで売るか」はとても大事で、営業だけで決めてはいけません。安く売りたくなってしまうからです。と言っても、絵空事のような金額にしても意味がありません。
私が改革に取り組んだ際には、そこに踏み込んで売値を変更しました。たとえば、1,000円のばら売りを3,000円のパッケージ販売に。3倍でモノが売れるようになれば、雇える人の水準が上がります。プロモーションに投資もでき、事業の成長角度も変わっていく。

適正な価値がわかれば、次にどんな価値を足すとプロダクトがもっと売れるのかというアイデアにもつながります。顧客と向き合う営業が「正しい価値を理解する組織」として機能し、いくらで売れるものなのかを実証していくことで、商品も変わっていくんです。