営業DXは何から始めるべき?
営業DXサービス「Sansan」を提供するSansanは、現在ではインボイス管理サービス「Bill One」やAI契約データベース「Contract One」といったさまざまな働き方を変えるDXサービスを提供している。
Sansanの営業部で、多くの企業のDX支援を行ってきた島﨑氏は、「営業分野においてはさまざまなDXサービスが展開されているが、サービスが乱立しており何から始めていいかわからない企業も多い」と語る。

大学卒業後、ベンチャーの広告代理店に入社。その後、事業分割により大手広告会社向けのSaaSサービスを提供する会社の立ち上げメンバーとして参加。営業責任者、プロダクト管理者として9年間経験を積んだ後、2017年にSansan株式会社に入社。現在は、従業員規模200名未満の企業を対象としたSMB営業部の東日本領域を管轄する実務責任者として、顧客の営業DXの推進を支援する。
たしかに、昨今は見込み顧客の育成管理のためのMAツールや、案件管理ツール、アポイントを自動で調整してくれるツールなど、目的やフェーズによって多様なサービスが登場している。これだけサービスがあふれていると、何をどう活用していいか迷ってしまう営業チームも少なくないだろう。
では、営業DXは何から始めればいいのか。島﨑氏は営業DXの目的から整理した。同氏は「ITツールの導入目的は大きくふたつある」と説明する。
「そのふたつとは、『売上の拡大』と『コストの削減』です。これらを達成することで収益の最大化を目指すこと。これがITツール導入の最大の目的と言えます」(島崎氏)
売上拡大、つまり受注金額を最大化するためには、受注件数と単価の両面からアプローチする必要がある。そして、顧客へのアプローチ数とアポイント獲得率の向上が求められる。
そこで鍵となるのが、「顧客との接点情報の活用」だ。
顧客情報の一元管理で、商談準備を効率化
接点情報とは、「顧客の人物情報」と「顧客の活動情報」のことである。顧客の人物情報とは、名刺や、メールの署名情報、人事情報など。また顧客の活動情報というのは、商談履歴やウェブからの問い合わせの内容、社内の人脈情報などを含んでいる。

接点情報には、案件の決裁者やキーパーソン、製品導入における賛成派・反対派といった重要な情報が含まれているはずだ。しかし、「こういった接点情報は多くの企業が蓄積・活用に苦労している」と島崎氏は指摘する。多くの企業が、見込み顧客の案件情報や受注企業の取引先情報の蓄積にとどまっているという。
そこでSansanでは、営業DXサービス「Sansan」を通して、顧客の情報をすみずみまで集約できる接点情報のプラットフォームを提供している。
「Sansanでは、交換した名刺の情報やメールの情報が人物情報として蓄積されます。そこに、どういったコミュニケーションをとったのかという活動の履歴が重なっていきます。加えてSansanでは、100万社以上の企業情報や、大手企業の役職者の情報をあらかじめ保有しています。この企業情報と接点情報を組み合わせることによって、営業活動をサポートしています」(島崎氏)

さらにSansanでは、メール配信やDM送付といった機能も備えており、顧客へのアプローチを強化することも可能だ。
もうひとつのITツールの導入目的である「コスト削減」に関しても、多くの企業が課題を抱えている。実際、サービスを導入したものの、思うようにコスト削減につながっていないと感じる営業パーソンも多いだろう。

島﨑氏はマッキンゼーの調査データを示しながら、「日本企業の営業生産性が低いのは、業務時間の半分以上を資料作成などの時間に充てているため。提案準備の時間は全体の3割程度にとどめるのが理想」と指摘した。

この効率化を実現する鍵は、「顧客情報を一元的に管理すること」だと島﨑氏。ひとつのツールの上で、顧客に関するさまざまなソースの情報を一括で見ることができれば、商談準備の時間短縮につながる。
「Sansanでは、直近の売上や中期経営計画、その企業に関連する最近のニュースといった企業情報をシームレスに見ることができます。また、商談の担当者の人物情報や活動情報もあわせて確認できるため、商談準備の効率化につながると考えています」(島崎氏)
営業活動におけるAI活用の可能性
ここまで、売上拡大のためのITツール活用について解説してきた島﨑氏。続いて、昨今話題の「AIを活用した営業生産性の向上」について知見を共有した。
AIの活用にあたっては、AIの学習に必要なデータを整えることが最初の入り口となる。そのデータの量と正確性を担保することが重要だ。しかし、「営業活動にAIを活用しようとすると、まずこの多様で正確なデータを自社で集めることが非常に難しい」と島﨑氏。

この課題に対し、Sansanには網羅的で正確な企業情報や人物情報が蓄積されている。島﨑氏は「これらのデータをAIと合わせて活用することで、営業戦略の策定やターゲットの選定、業界・企業理解や提案力強化につながる」と説明する。

島﨑氏は最初の問いに戻り、「営業DXを何から始めればよいか」という課題に対して「顧客接点のデータ化とAIの活用から始めてみては」と提言した。
「お客様との接点情報は皆様の企業の中に眠っている資産。これを有効活用することが、営業DXの第一歩だと考えています。Sansanはスキャナーやスマートフォンで名刺をスキャンしていただくだけで使えるので、デジタル化への抵抗がある企業でも容易にDXをはじめる第一歩として踏み出せるツールです」(島崎氏)