RevOpsに取り組むべき3つの理由と、「短期思考」の落とし穴
──なぜ今、日本の営業組織にとってRevOpsが必要なのでしょうか。
グローバルのトレンドも踏まえてお伝えすると、大きく3つの理由があります。ひとつは、顧客の購買プロセスの複雑化です。顧客の情報収集の幅が広がり、必ずしも営業と会う必要がなくなっています。その中で自社の製品・サービスを売るためには、顧客体験が断片化しないように、営業やマーケティング、カスタマーサクセスが連携する必要があるのです。
ふたつめが、データ活用の高度化です。日本ではオペレーションモデルの概念なしにテクノロジー導入が進んだことによって使いこなせていない企業が多く、グローバル市場と比較して、営業プロセス変革やテクノロジーが遅れています。意思決定をデータドリブンで行うことがあたりまえになってくる中で、RevOpsに注目が集まっています。
3つめがAIや新技術への適応です。生成AIが予想以上の速度で実用化されている現在、今からAI活用に取り組むかどうかで、5年先、10年先の競争優位性が大きく変わってくるでしょう。AIのパフォーマンスを最大化し、より精度が高い意思決定やプロセスの効率化を実現するには、自社独自の高精度なデータが必要です。そのため、データマネジメントやプロセスマネジメントの重要性が増し、それを支える役割としてRevOpsへの期待が高まっているのです。

──RevOpsに挑戦する際には、どのような課題が生じるでしょうか。
顕在的な課題のひとつが、データのサイロ化です。営業やマーケティングなど、各部門で運用しているシステムやデータのフォーマットが異なり、全体最適が難しいのです。
ふたつめは、RevOpsを担う人材が不足していること。日本にはまだRevOpsの経験者が少なく、データ分析やプロセス設計など必要なナレッジ・スキルがある人材はなかなか採用できません。
また、経営層のRevOpsに対する理解が不足していることも問題です。経営層がRevOpsの重要性を理解して積極的に推し進めないかぎり、実現は難しいでしょう。
そして潜在的な課題として、“企業カルチャー”に基づく抵抗が起こる可能性があります。とくに大企業の場合、組織が分かれていると、どうしても対立が生じてしまいがちです。そうした壁を乗り越えて、協業を促進できる企業カルチャーを醸成できるかがRevOpsの実現を左右します。
加えて、人材配置やシステム導入といったリソースの確保も重要ですね。中途半端なリソースで場あたり的に施策を講じても、RevOpsは実現できません。RevOpsの自社のあるべき姿やスコープを定義しないと、“御用聞き部門”になってしまうなど、取り組みを継続しづらくなってしまいます。
組織変革の取り組みは短期的なROIが見込めるものではありません。たとえば家を建てるときに「基礎工事は必要か?」とは思いませんよね。同じように、企業が存続するために必要な戦略と実行をつなぐ、まさに基礎となるのがRevOpsです。そもそも超短期的にROIを求める取り組みではありませんが、たとえばフォーキャスト(業績予測)の仕組みをつくろうとして、経営層から「その取り組みによって、今期の売上はどう変わるのか」と短期思考で評価されてしまうようでは、誰も挑戦できなくなってしまいます。
これらの課題を乗り越えるには、社内外全体を俯瞰し、持続的に成長するための判断ができる“推進者”の存在が鍵を握ります。「自分達の組織は特殊だから」と思考停止せず、自社の課題と客観的に向き合い、他部門も巻き込みながら、社外からもさまざまな知見を吸収する柔軟性がリーダーには求められるでしょう。
──これからRevOpsに挑戦する日本の営業リーダーに向けて、メッセージをお願いします。
RevOpsは単なるトレンドワードではなく、持続的な売上成長を目指していくための必要要件です。労働人口が減少する一方で顧客の期待値はますます増加し、競争も激化していく中で、テクノロジーを活用しながら部門間をつなぎ合わせ、一致団結して価値を提供していく必要があります。
RevOpsは一朝一夕で実現できるものではありませんが、まずはおさえるべきポイントを理解したうえで、取り組めるところから始めてみてください。地道に泥くさくチャレンジし続けていくことで得られる効果は、長期的にはかなり大きなものになります。
ぜひ一緒にRevOpsについて学びながら、日本の企業の成長を目指していきましょう。

──本日はありがとうございました!