ダメ営業は熱くなると周りが見えなくなる?
年末が近づき、忘年会のシーズンがスタートした。新型コロナウイルスの影響で一時下火になったが、最近ではまた開催する企業も増えてきた。組織にとって、こういったコミュニケーションも重要だ。
一方、忘年会での振る舞いによって“より信頼関係が深まる”こともあれば、“関係が悪化してしまう”こともある。
ある年の忘年会で、敵を増やした人がいた。中堅の営業スタッフAさんが、酔っぱらい始めた。Aさんの成績はいつも良く、トップランカーだ。
加えて親分肌の人だ。私を含めまわりの営業スタッフに対して「こっちに集まれ」と言い出した。5、6人程度集まったところでAさんは「これから契約をとる秘訣を教えてやる」と言って熱を込めて話し始めた。
いつもは騒いで終わりの忘年会。たまにはこういった身になる話も良い。そう思いながら話を聞いていた。しかし、この話は長かった。Aさんの話はどんどんヒートアップ。酔っぱらっているせいか話に矛盾も多い。だんだんと何が言いたいのかわからなくなってきた。
しかもAさんは真剣そのもの。席を立って移動できる雰囲気ではない。はじめこそ“契約をとる秘訣”だったものの気がつけば“会社の不平不満、スタッフの愚痴”となっていた。30分を過ぎたころから、その場にいた営業スタッフたちは苦痛の表情を浮かべるようになった。しかし本人は熱くなっていて、まったく気がついていない。結局、1時間近く愚痴を聞かされることに。
その場にいる全員が、この忘年会の独演会でAさんのことが嫌いになった。悪口を言われたスタッフとの関係がこじれたのは言うまでもない。その翌年、Aさんはガクッと成績を落としたのだ。
熱くなり過ぎてまわりが見えなくなる。これはダメ営業スタッフがやりがちなこと。
営業のシーンでも、「これは重要なポイントだ」と夢中になって説明する。すると、自分自身は熱くなっているから時間感覚がなくなる。10分くらいだと思っているのだが、実際は30分以上たっていることもある。営業スタッフの熱意と反比例してお客様は冷めていくものだ。
忘年会や飲み会は一方通行のコミュニケーションの場ではない。気持ちを込めて話すのは良いが、まわりの人の反応もよく観察する必要がある。それを忘れれば嫌われるだけ。敵を増やし、そのうち誰も寄り付かなくなるだろう。十分注意をする必要がある。