メンバーを活かすのは「愛されるリーダー」
──「なめられてはいけない」「毅然とせねばならない」と考える営業リーダーも少なくありません。しかし、書籍の中で遠藤さんは、現代のリーダーはサーバントリーダーシップを発揮し「愛されるリーダー」を目指すべきだと提言されていますよね。
私も最初にマネージャーになったときは、なめられないように強い言葉で、誰も反論できないように振る舞っていました。
しかし、マネジメントをやっているうちに、メンバーたちの足りないところを補って、サーバント(召し使い)的に振る舞ったほうがみんなが活き活きする、さらに数字もあがることに気がついて、これが最高だと思ったんですね。
とはいえ、リーダーは同時にチームの目指すべき方向を示す必要があります。これは、ロバート・K・グリーンリーフの『サーバントリーダーシップ』(英治出版)にも書かれており、「リーダーはサーバントかつ、目指す北極星を示すことで完成する」と言われています。
私はサーバントをしながら「アジア1のチームになろう」「日本全体をデータドリブンに変えよう」といった、高尚でありながら少し恥ずかしくなるような大きなビジョンを掲げていました。これによって「目指す方向に進むために、後ろから支えてくれる人」という認識をチームメンバーが持ってくれた。この人のために数字をつくりたいという空気が生まれたのだと思います。
この「ビジョンを掲げつつ、支える」という両輪は、多くのリーダーが何気なくやっていることだと思います。しかし、意識して言語化されていないのが課題です。私自身、書籍を読んでから意識するようになり、求心力が上がったと感じました。
──なるほど。組織で掲げられている北極星を意識して、メンバーにその価値を伝える時間を定期的に作ることも大事になりそうですね。
背中を見せるだけでわかってもらうのは、難しい時代になってきています。私はチームを大切に思っていることを伝えるために、毎週10分程度の時間を設けて、「リーダーとしてみんなに対してどんな思いがあるのか」とエピソードを語るようにしていました。リーダーとしての価値観が理解される機会にもなります。
そういう努力をしないと、リーダーが何を目指しているのか現場には伝わりません。私も昔は怖い顔をしていて、それを写真で見せられて反省したことがあって。みんなの前で笑顔をつくる練習もしました(笑)。
私が尊敬するリーダーたちも、ユーモアのある発言や振る舞いの前にたくさん準備をしていて、愛される努力をしている。自然とできてしまうリーダーはいなくて、多くのリーダーがチャレンジを重ねているんです。
──最後に、日々奮闘している営業リーダーの読者に向けてメッセージやアドバイスをお願いします。
営業リーダーは、四半期ごとの数字に責任を持ち、精神的にも大きなプレッシャーがかかる立場です。その中でやるべきことをたくさん抱えて、「自分がやってることは現場に伝わっているのか」と不安に思うこともあると思います。
私が伝えたいのは、その努力はメンバーがきっと見てくれていて、たとえリーダーの振る舞いが完璧でなくても一緒に成長しようと思ってくれるメンバーがいる、ということです。努力する姿から伝わるものがあると思いますから、ぜひメンバーと一緒に成長していってほしいです。
また、営業リーダーとしてはKPIマネジメントやアカウントプランといった営業オペレーションで、学ばなければいけないナレッジ・スキルもあります。このあたりは『なぜ営業リーダーの仕事はこんなに難しいのか』の中で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください。私が何年もかけて行ったマネジメントスキルの構築を、書籍を読んだ皆さんが半分の期間で達成してくれたら、著者としてはいちばんの喜びです。
数字をあげるための営業オペレーションを当たり前にできるかどうかで一流の営業マネージャーになれるかが決まります。こうしたスキルも身につけて、爆発的に皆さんの製品が世の中に広がっていく、エキサイティングな瞬間をチームで味わってほしいと思います。
──ありがとうございました!