点を線につなげていく 営業プロセスごとの“目的設定”
訪問によって何を成し遂げたいか明確にしておくことは、営業活動の基本中の基本です。なぜなら、営業活動は点が線になっていくプロセスの連続だからです。単発のトークや1度の訪問・提案で完結するのではなく、初回訪問→提案→決裁者対応→クロージングという連続したプロセスの中で、信頼を少しずつ積み上げていくのです。だからこそ、営業プロセスごとの目的の定義が欠かせません。
- 初回訪問:信頼関係の土台づくりと、次回提案に向けたヒアリング
- 一次提案:現状理解と、初期解決策で期待を引き出す
- 二次提案:決裁者を意識し、導入メリットを明快に伝える
- クロージング:迷いを払拭する最後の一押し。導入後のイメージまで描く
お客様が本当に聞きたいのは「活用後の姿」
お客様が本当に求めている情報は、サービスの仕様やしくみではありません。「それが自社の現場にどう活きるのか」「導入後に何の業務がどの程度楽になるのか」など、活用のイメージが描けた瞬間、“買う理由”が生まれるのです。
たとえば、「業務効率が上がります」という説明だけでは、活用後のイメージが少しぼんやりしています。それよりも「A社では手作業で行っていた処理をデジタル化したことで、月30時間分の作業を削減し、営業担当が提案活動に集中できるようになりました」と、具体的な数字があるほうが、具体的なイメージを与えることができ、相手の心に残ります。
事前準備は調査より「想像と仮説」
訪問の準備というと、業界情報を集める、IRを読む……という話になりがちですが、本当に大切なのは次の3つです。
1.お客様がもっとも課題に感じているのは何か
2.それが解決されると、どのような評価や成果が期待できるか
3.自社がそこにどう貢献できるか
これらを会話に落とし込むためには、仮説を立てて、シナリオにしておく必要があります。事前にお客様を想定し、自分の中で商談の流れをひととおりシミュレーションしてみる。そんな“ひとり商談”も、私がよくする準備のひとつです。

営業プロセスごとの目的に沿った行動が、営業活動における本当の推進力です。訪問のたびに「今日の目的は何か」と自問して臨むだけで、会話の流れや結果の質も変わってきます。
とはいえ、営業という仕事のおもしろさは、常にロジカルに動くことだけでありません。明確な提案があるわけでもなく訪問した相手と、なぜか会話が弾み、そこから新たな展開につながった。そんな経験は私自身にも何度もありました。
関係構築の初期段階では、理屈より距離感のほうが大切な場面や、偶然の会話が信頼の扉を開くことがままあります。それが営業のもっとも人間味あふれるところです。だから私はこの仕事がおもしろいと感じています。