「ロープレ上手」が陥りやすい罠
あなたの周りに、ロープレは上手いのになぜか売上が伸びない人はいませんか? 以前、全国に支社を持つ大企業のロープレ大会に招待されたとき、とあるマネージャーが私にボソッと言ったことがあります。
私の部下は、ロープレは上手いのですが、まったく売れないんです
その人の部下は、地区の代表として選ばれた人物でした。ロープレを見ると、たしかに話し方は上手です。表情も豊かで表現力もありました。しかし、少し気になる部分もありました。あまりにも説明が上手すぎるのです。
「それのどこが問題なんだ」と思うかもしれませんね。しかし往々にして、この「上手さ」の裏に、売れない原因がひそんでいるのです。
たとえば保険や証券など金融系の営業の場合、法律上説明しなくてはいけない内容が多く、商品も複雑で、どうしても説明が多くなってしまいます。そのような業界におけるロープレは、「きちんと説明できているかどうか」のみをチェックする場になりがちです。営業担当は上手に説明することを意識しますし、ロープレをチェックして指導する上司も、説明の上手さを評価対象にしてしまうでしょう。その結果、部下は「説明マシン」と化し、お客様の理解や納得感を置き去りにしてしまう。これが売れない原因となるのです。
説明の上手さと売れるかどうかは必ずしも比例しません。プレゼンでもっとも大切なのは「相手に伝わるかどうか」。だからこそ、商品説明の練習だけでは不十分で、そのひとつ手前のヒアリングからロープレを始めなければ、練習にならないでしょう。逆に言えば、目の前のお客様に伝わるのなら、たとえトークがたどたどしくても、売れる人は売れます。とくに内向型営業は口下手な人が多いですが、トークスキルよりも、相手が理解しやすい説明ができているかをロープレのチェックポイントとして指導すると良いでしょう。
次ページでは、プレゼンのあとの「クロージング」について解説します。