なぜ今、「セールス・イネーブルメント」なのか?
昨今、私たちを取り巻く社会・経済環境は急速に変化しています。日本ではとくに少子高齢化の進行による生産年齢人口の減少が問題となっており、2022年に内閣府が発表した「令和4年版高齢社会白書」では「2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)に減少する」ことが報告されています。このまま減少が続けば、人手不足はより深刻化し、採用活動がますます難化していくでしょう。
さらに、2012年に発表された「The End of Solution Sales」(Harvard Business Review)において「一般的な購買の意思決定のうち、平均して60%近くをサプライヤーと話をする前からすでに完了させていた」という調査結果があるように、近年インターネットでの情報収集が容易になったことで、顧客の購買行動も変化しています。
また、アメリカの調査会社であるコーポレート・エグゼクティブ・ボード(CEB)社の「Making the Consensus Sale」(Harvard Business Review)によると、「ひとつの購買あたり平均5.4人が携わっている」ことがわかっており、営業には顧客や各意思決定者に適切にアプローチしていく力が求められています。
そのような状況の中、最近日本で注目されているのが「セールス・イネーブルメント」です。「Sales=営業」と「Enablement=できるようにする」という言葉から成る造語で、端的に「営業組織の誰もが再現性を持って売れる」と定義できます。
セールス・イネーブルメントに取り組むことで、営業組織の属人性を限りなく排除し、再現性を持たせられるため、営業の育成コストの低下や、採用の低難度化、営業生産性の向上が見込まれます。
MILLER HEIMAN GROUPが2019年に発表した「CSO-Insights-5th-Annual-Sales-Enablement-Study」によると、アメリカでは2010年代からセールス・イネーブルメントに取り組む企業が増え、2019年には61.3%の企業が取り組んでいるとされています。また、2018年に同グループが発表した調査では「セールス・イネーブルメントに取り組んでいる会社と、そうでない会社とでは前者の方が約25%目標達成率が高くなっている」ことが指摘されており、セールス・イネーブルメントへの取り組みは明確に業績と相関があるとわかります(下図)。
人手不足から採用活動が高難度化し、人材の流動化で優秀な人材の転職可能性が高まっている日本において、セールス・イネーブルメントへの取り組みは企業が安定的に成長を続けるうえで重要な鍵になると言っても過言ではありません。
このように、日本でも注目されているセールス・イネーブルメントですが、実は「誰もが再現性を持って売れるようになるための取り組み」が始まったのは、最近ではありません。
ここで少し営業手法の歴史についてご紹介したいと思います。