マーケティングとインサイドセールスの分断への違和感
いいたか ひとつめのテーマは、「連携部署から見たインサイドセールス」。さまざまな経験をもとに、ポジティブな面、ネガティブな面を含めてお話を聞かせてください。
向井 前提として「ウェビナーや展示会で接点を持った見込み客の方にインサイドセールスがひたすら架電をし、たくさんアポを獲得しているものの売上が伸びないんです……」という相談はとても多いです。インサイドセールスの定義が明確に決まっていないから発生する課題ですね。
大切なのは、「自社の営業プロセスにおいてインサイドセールスが果たすべき役割」をまずは定義すること。アポが受注につながらないのあれば、役割を見直す必要があるかもしれません。体感、7~8割の企業がインサイドセールス=アポどり部門になっているのではないかと。ひとつのあり方ではありますが、インサイドセールスはあくまで営業職。アポ獲得は、売上を上げる営業職として一時的に特定された職務だと理解してもらうと良いかなと。
向井 連携の観点で言うと、アポが増えるとフィールドセールスは忙しくなる。ただ、受注につながらないものが多いとなると当然営業組織は疲弊するし、「とりあえずのアポ」でもっとも被害を被るのはお客様です。最悪の顧客体験を経たお客様から、メールの配信停止をされてしまえば、もう接点を持つことは難しいでしょう。
とにかく全員がハッピーではない状態が発生しがちですから、このセッションを通じて「インサイドセールスはこうあると良いよね」と、それぞれの解が生まれると良いなと思っています。
いいたか 戸栗さん、マーケティング側の視点から連携について語っていただけますか。
戸栗 インサイドセールスとマーケティングとの連携は非常に重要だと思っています。というのも、インサイドセールスはお客様という生身の人間と接点を持つ役割であり、お客様が求める情報をキャッチしやすい場所にいるわけです。それをマーケティングにフィードバックすると、リードの質──という言い方が適切ではないかもしれませんが──改善するんですね。
戸栗 架電の総数が減り、1件の電話できちんと長く話すことができれば、お客様の状態をよく理解したうえで、次のチームにつなぐべきか判断できるようになる。ある程度量をこなすことも重要ですが、「量をこなし続ける」から脱却するためには、マーケティングと近づいてコンテンツづくりにお客様の生の声をフィードバックできると良いと思います。
向井 戸栗さんにお聞きしたいです。マーケティングとインサイドセールスの連携が重要なのはわかっているけれど、レポートラインもKPIも違って難しい、そんな組織はどうすればうまくいきますか。
戸栗 マーケティング組織の中にインサイドセールスチームがあるケースは比較的うまくいく気がします。マネージャー同士も、現場同士も連携がとりやすいからです。逆に営業部門にインサイドセールスが所属すると、営業部門を介してマーケティングとコミュニケーションを行うことになるので、少し距離が生まれやすいですね。
もうひとつは特殊ケースですが、私が在籍していたHubSpotでは、営業メンバーがマーケティングに取り組み、コンテンツづくりやお問い合わせの流れを体験してみる時期がありました。お互いの理解を深めることは大切ですね。
いいたか 僕も前職でCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)を務めていましたが、マーケティングとインサイドセールスの分断には違和感があり、入社するタイミングで体制を変えてもらうようにトップ層にプレゼンしましたね。連携においては、トップの意思決定がすべてという側面もありますね。