カスタマーサクセスが挑むエンタープライズプロジェクトとは?
高橋(才流) カスタマーサクセス組織は現在120名ほどの規模だとうかがっています。稲船さんが入社された2019年と比べるとさまざまな変化があるのではないでしょうか。
稲船(SmartHR) コアな部分は変わっていませんが、組織としてできることがかなり増えました。一方で、新たな課題もあります。組織が小さいときは、問題が発生しても即座にカバーができましたが、一定の規模に達すると、変化が及ぼす影響範囲や手戻りのコストなどが大きくなるため、両立が難しくなるのです。つまり、迅速さと確実性のバランスをとる難易度が上がったということです。
高橋 あらためてカスタマーサクセスとしての現職での役割を教えてください。
稲船 現在はカスタマーサクセスのマネジメントや組織づくりにコミットし、事業目標の数字責任を持っています。お客様の成功を目指すというミッションに対し、どのようなサービスを提供していくか、大枠のビジョンや方向性を考え、立案していく役割を担っています。カスタマーサクセス組織の各マネージャーが実行に移す方向性を指示し、その実現を確実にすることが求められています。
高橋 2023年3月にARR100億円を達成され、大きな成長に注目が集まっています。まずは、日本企業でもまだ事例が多くないエンタープライズ企業に対するカスタマーサクセスについてお話をうかがいたいです。実際に、エンタープライズ企業への導入も増加しているのでしょうか。
稲船 導入企業様はSMBからエンタープライズ企業まで幅広く、収益のバランスについても一対一の関係です。つまり、ある一部に注力するというよりは、どの部分にも手を抜かずにサービスを提供している状況です。一方、エンタープライズ向けの導入プロジェクトは、1年以上かかることもあり、関わるお客様側の人数も多いため、1社に対して複数のカスタマーサクセスメンバーが伴走するケースもあります。
高橋 エンタープライズ企業向けのカスタマーサクセスはどのような業務を行うのでしょう。
稲船 エンタープライズ向けの導入支援プロジェクトをマネジメントするエンタープライズプロジェクトというチームを組成しています。お客様の課題解決に関する大きな計画に対して、SmartHRの導入や活用をプロジェクトとして進行するためのプロジェクトマネジメントを行うことが主なミッションとなります。
稲船 プリセールスやセールスと一緒に要件を整理し、お客様とのプロジェクト的な交渉、開発のロードマップとお客様のニーズのすり合わせをプロダクトサイドからの支援も受けながら行います。
高橋 エンタープライズプロジェクトのかたちをとるまでに、どのような試行錯誤があったのでしょうか。