スタディサプリが法人営業を立ち上げたきっかけとは
山下(R-Square & Company) 現職にいたるまでの木村さんのキャリアについてうかがえますか。
木村(リクルート) 今年でリクルートは入社21年めです。一貫して営業や営業企画として働いてきました。入社から3年くらいは社会人向けスクール情報誌「ケイコとマナブ」のメディア営業を担当し、その後は「タウンワーク」「フロムエー」など、求人領域の営業企画・商品企画に4年ほど携わりました。
リーマンショック後は、「ゼクシィ」の営業マネージャーとなり九州で3年ほど働き、東京に戻ってからも営業企画・推進のマネージャーを務めました。次に、大学や専門学校などの募集支援を行うコンサルティング組織の営業マネージャーを2年勤め、ようやく現在の事業ですが(笑)、スタディサプリ事業の営業マネージャー、営業部長を5年、直近の1年はスタディサプリ事業全体の「セールス・イネーブルメント」責任者を務めてきました。
山下 リクルートのビジネスの幅広さは皆さんご承知のとおりですが、木村さんは本当にさまざまなジャンルで経験を積まれていますよね。今回はスタディサプリ事業におけるイネーブルメントの取り組みについてうかがいますが、まずはスタディサプリ事業について教えていただけますか。
木村 スタディサプリは立ち上げ当初、月額980円で全教科の動画が見放題の「手軽で安価なオンライン予備校」としてスタートしました。金銭的または立地の問題などで「塾に通うことができないけれど学びたい」という若者に学習機会を提供し、教育格差の解消に寄与することができました。たとえば、「塾がまったくない孤島から東大に進学できた」という事例も増えていったのです
一方、「機会の格差」の解消に取り組んでいく中で、「やる気の格差」が非常に気になるようになりました。つまり、もともとやる気のある生徒は機会さえ提供すれば学びを深められますが、世の中には自ら意欲的に学習をする生徒ばかりではありません。では「やる気」に向き合っているのは誰かと言えば、そこが学校や自治体の役割なのです。個人の利用だけではなく、学校法人からの問い合わせが増え始めたのはひとつの転換点でした。
スタディサプリは学校から見るとある意味「競合」と捉えられるのではと思っていたのですが、実は違ったんですね。学校の先生は1対40で授業を日々行っていて、個別最適の限界を感じています。授業とスタディサプリを組み合わせることで課題を解消してもらえるよう、私立高校などを対象にした法人営業をスタートしたのが約7年前のことです。