営業と共に「解約防止」を考えた原体験
――リンクに入社される前に3社でカスタマーサクセスに携わってきたとうかがっています。カスタマーサクセス職に出会ったきっかけを教えてください。
10年間で「需要予測」「RPA」「MA」の分野で国産ツールを提供する3社を経験し、優秀なメンバーに囲まれながらカスタマーサクセスの立ち上げや運用に携わってきました。カスタマーサクセスというキーワードが盛り上がってきたのはこの5年くらいの印象で、1社めの需要予測ツールに携わっていた10年前は、SaaSというキーワードさえ一般的ではありませんでした。
1社めは問い合わせ対応などを行うカスタマーサポート職として採用されたのですが、待てど暮らせど、ユーザーからの電話は来ないし、やっときたと思えば「解約の申し出」という地獄の連絡で……。解約手続きの対応をしていたところ、「なんで解約を阻止しないんだ!」という叱責があり、それが私のミッションだったのですねとようやく気がつきまして(笑)。ひとまず解約理由をうかがってみるも、当時の私はお客様の課題を引き出す能力もなく、向いていないな……と感じる日々でした。
そんなとき私のミッションに協力してくれたのが、年齢も近かった若い優秀な営業メンバーたちでした。思い出すと涙が出そうですが、「解約を阻止するために、契約段階で営業は何をして、サポートの大関は何をすれば良いかな」と一緒に考えてくれてたんです。いまのカスタマーサクセスでは当たり前のことですが、定期的に連絡をとり、契約更新より早いタイミングでこちらから情報提供ができるよう、Excelファイルでお客様の状況や接点を営業と整理していきました。
――実際にどのような成果が出たのでしょうか。
最初こそ「寝た子を起こさない(=契約更新前に連絡しない)ほうが良いのでは」という声も出たのですが、営業と私の間で「それって本質的ではないよね」と合意し、契約更新前のお客様に声を掛けていきました。正直、最初はかなり解約が発生したものの、利用目的を明確にしたうえで、いまで言うオンボーディング――導入支援を一定期間行えば解約が発生しづらくなるという仮説を立てて取り組みをスタートしました。実際、取り組み以降に解約するお客様は圧倒的に減り、導入後のお客様と接点を持ちやすくなったことで追加提案もしやすくなる良いサイクルができ、我々の会社全体の雰囲気も良くなっていきました。
――その後2、3社めへとチャレンジの場を移した理由も教えてください。
営業と協力し合った原体験からも、カスタマーサクセスはひとりで実現できることではないと考えました。当時はまだ情報も少なかったですし、私と同じように困っているカスタマーサクセスがいたら背中を押したいと思ったことがひとつ。また、カスタマーサクセスを突き詰めて考えるとさまざまな疑問が浮かんできたんですね。商談の段階から改善できることがあるのか、それより前のマーケティングの活動から入り込んでいく必要があるかもしれないなど――。見聞を広げるために違うサービスを経験しようと、5~6年前に2社めに転職しました。そこはすでにカスタマーサクセスがある会社で、Googleで「カスタマーサクセス」と検索すると上位3つくらいは関連記事が出てくる時代になっていました。