商談数は3分の1に 人生でもっとも働いた「営業の仕組みづくり」の1年
――コロナ禍で営業チームが抱えていた課題について教えてください。
2020年度は本格的にエンタープライズ企業へのご提案に力を入れていこう、というタイミングでした。そこで私がマネジメントを務めるエンタープライズセールスチームが、ベテランの営業社員と新卒2年めの若手社員、インターン生の合計4人の少数精鋭チームとして組成されました。
コロナ禍における大きな課題は、まさにこのエンタープライズセールスチームが機能しないことでした。お客様のところに訪問して、対面でご提案するスタイルが当たり前だったのですが、緊急事態宣言下でエンタープライズ企業でも在宅ワークが加速し、お客様が会社にいないことが常態になってしまい、商談数がコロナ禍以前の約3分の1にまで激減しました。いま振り返ってみると、2020年は本当に苦しく、人生でいちばん働いた1年でした。
それでも、商談がつくれない以上、いったん目標を度外視して「今できることをやろう」という方針に振り切ることができたのは良かったと改めて思っています。現実的に無理な数字を追い続けて疲弊してしまうのではなく、半年先、1年先の受注を目指してお客様との関係をつくり、土台を整えていこうとチームで合意することができました。そのために取り組んだのが、「ウェビナーの実施」「ALLオンラインでのチームづくり」「オンラインセールス化」の3つです。
「ウェビナーの実施」については、誰も登壇経験者がいなかったため、以前から実施していたマーケティングチームのウェビナーを見たり、他社のウェビナーに参加したりして、視聴者の視点で良いと思う流れやアンケートの挿入などの要素を取り入れてコンテンツをつくっていきました。特に意識したのは、今お客様が感じている課題ではなく、半年先、1年先に顕在化すると思われる課題を中心に構成していくことでした。
というのも、2020年4月の最初の緊急事態宣言下においてエンタープライズ企業のお客様の課題は「まずはビジネスができるインフラを整えること」でした。つまり、「Unipos」に限らずですが、それ以外のシステムやサービスなどについては検討の優先度が上がりづらかったのです。そこでテレワークを続けて半年後、1年後に起こってくるであろう社内のコミュニケーションや評価の課題にスポットを当てるなど、直球勝負でなく将来的な課題を中心に訴求してお客様の興味を引いたところ、ウェビナー経由で実際に商談が生まれて受注に至ったケースも多く出てきました。
お客様と継続的に接点を持つことができるようにダウンロード資料や記事も作成していたのですが、それよりもまずは情報収集でも良いのでお客様との最初の接点を最大化することを優先しました。少数精鋭かつ、プレゼンも比較的得意な我々の営業チームが主導する企画としてウェビナーは効率的でした。
「ALLオンラインでのチームづくり」は私自身も初めての経験でした。もともとセールスチームの共通認識、共通言語としてマシュー・ディクソン氏、ブレント・アダムソン氏の著書『チャレンジャー・セールス・モデル』(海と月社)をバイブルと位置づけていたのですが、これをチームで読み返しました。4年間で90社、6,000名の営業を分析している本書からは多くの気づきを得ました。