「顧客に損をさせない仕組み」をつくりトップ営業に
――フュービックに入社したきっかけを教えてください。
18歳のとき通っていたキックボクシングジムにフュービックの社長が入会したんです。当時社長は29歳で会社は9年め、自動車販売を中心に非常に伸びているところでした。社長から「人が足りないから手伝いに来て」と声をかけてもらって、社長と知り合いだったジムの先生からも「修行しておいでよ」と背中を押され、入社しました。
人当たりが良いタイプだったことを見込まれ、営業としてキャリアをスタートしました。しかし、全然売れなかったんです。1時間の商談は盛り上がって、「今度ごはん食べに行こうよ」と言ってもらえるくらいに仲良くなるのに、なぜか車は買ってもらえない。一方で社長や先輩たちは、僕の半分の商談時間でトークも淡泊に見えるのにバンバン車を売っていました。
ある日社長から「一流の営業ってなんだと思う?」と聞かれ、僕は「自分を売り込んで、買ってもらえる営業」と答えたのですが、「それはまだまだ二流だ」と諭されました。三流は「会社の力を使って売る」、二流は「自分を使って売る」、そして一流は「仕組みで売る」のだと教えてもらったのです。そこから、車を売るときに重要な仕組みについて考えたのですが、それは「相手に損をさせない車を売る」ことだと思い至りました。
というのも、200万円の車を買って支払いは月1万円ほど。2万円ずつ払ったとしても、2年で50万円くらいしか返済できませんし、200万円の車の2~3年後の車の価値は50万円くらいです。乗って下がってしまう車の価値と、ローンの減るスピードがかみ合っていませんでした。自分は車を売れば歩合で給料が上がるのに、僕から車を買った人は得をできていなかったわけです。
そこで、車のローンを払い終えるタイミングと車の価値がクロスし、「乗り換えがしやすい仕組み」があれば良いのではないかと考えました。さまざまなメーカーのあらゆる車種を分析し、値段が下がらない車、買ったら損をしてしまう車を徹底的に分析していきました。とある方程式を見つけてからは、リセール金額を算出し、お客様が月々に払える金額に対して「何年後なら乗り換えしやすいですよ」という助言をしながら車を売るようになったんです。
お客様が求めている車でも無理な支払いや乗り換え時に残債が残るような車の場合、無理に売ることはしない。この営業スタイルが口コミで広がって、「小林から車を買ったら損をしない」と言ってもらえるようになり、3~4年めには自分から新規の営業をしなくてもお客様がやってくるようになりました。自動車販売だと3割程度が相場の成約率も、95%になっていました。
――売れる仕組みがうまく回り、その成果をもとに若くして店長になられたんですね。
入社して4年めの23歳で店長になりましたが、当時は完全に調子に乗っていました。「こうやったら売れるのに」「俺の言うことを聞いておけばいい」という態度で、売れない人の気持ちがわからなくなっていました。部下とのすれ違いが生じて、退職が相次ぎました。そしてその悪い雰囲気は事業所全体にも波及して、営業以外の事務員さんも辞め、最終的に経理もいなくなってしまい……。自分でやったこともない現金出納帳をつくっていたときは丸1日帰れませんでしたね。