転職市場全体はダウントレンド 「IT業界の営業」のニーズは上昇傾向
――本日は名刺アプリ「Eight」およびにダイレクト採用プラットフォーム「Eight Career Design」事業から見えたデータをもとに、営業のキャリアトレンドについてうかがっていきます。まずは小川さんのキャリアを教えてください。
2002年にエン・ジャパンで営業からキャリアをスタートし、営業責任者から新卒採用事業の事業部長まで務めました。2008~2009年のリーマンショック時には、事業再編のために戦略を立て直していくという大きな経験をし、その後、子会社に出向し取締役として新規事業の立ち上げを行いました。Sansanに入社したのは2015年のことで、カスタマーサクセスの立ち上げから、マーケティングやエンタープライズのセールスにも携わってきています。2020年に、「Eight Career Design」というダイレクト採用プラットフォームの事業をさらに加速させていくべく、責任者に着任しました。
今日は「営業のキャリア」をテーマに話していきます。私自身が営業担当者からスタートし、さまざまな職種の責任者や新規事業の立ち上げ、そしてマネジメントとしての採用・育成にも関わり、キャリアを広げてきました。営業にフォーカスしながら、「新時代のキャリアのあり方」について、名刺アプリ「Eight」から見えてきたデータや自身の経験と世の中のデータを参照しながらお伝えしていきます。
――早速ですが、コロナ禍で営業パーソンの転職は増えたのでしょうか。
実際には出向などのパターンもあると思いますが、Eightのデータベースでは「会社名が変わったデータ」を「仮想的な転職」と位置づけています。「営業職」に絞ると2016~2019年には大差がなかったのですが、2019から2020年にかけては20%弱「転職」が減ったという仮説が立てられそうです。
右側のグラフは、同業種内のいわゆる「即戦力転職」か、異業種へ移る「越境転職」の割合を示したデータです。2019年は「越境転職」が多いですが、2020年は逆転し同業種内での転職が増えています。なお「越境転職」は、景気が良いときに多くなる傾向があります。株式会社タナベ経営の調査「コロナ環境下の人材採用・育成に関する企業アンケート」によれば、33.1%が「今年もしくは過去2~3年で求める人材像や採用基準を大きく変えた」と回答しています。2019年の同回答比率は6.6%ですから、先行きが不透明な今、企業側も採用基準を高めて、即戦力採用の傾向が高まっていると言えるのではないでしょうか。
転職マーケット全体はどうか。総務省統計局によれば2019年の転職者は351万人と過去最高で、有効求人倍率も1.6倍と非常に高い水準にありました。しかし、コロナ禍の2020年8月~12月の有効求人倍率は1.04~1.05倍と低い水準にあり、2020年全体でも1.18倍です。また就業者の全体数は2019年の6,724万人から、2020年は6,676万人となり、48万人減っています。中でも「販売従業者数」は、856万人から848万人と8万人減で、全体の就業者数のダウントレンドは0.7%なのに対して、販売従業者数では0.9%減という結果となり、接触が控えられたこの1年ではとくにBtoCの販売職が厳しい状況にあったのではないかと予想できます。
――「接触を控える」時代、同様の理由でBtoBの営業の方々も働き方の変化を余儀なくされただろうと感じています。転職先の業界は変化していますか。
こちらもEightのデータをもとにした営業職の「転職」の動きを示したグラフです。上位13業界が対象で、青いグラフは同業間の転職、ピンク色は異業種間の転職を示しています。同業種間の転職において変化がないのは、「IT」「商社」「建設・工事」の動きがもっとも盛んであること。一方「エンタメ」は、2019年は4位でしたが、2020年には12位まで下がっています。
異業種間の転職においても、「IT⇔コンサル」「建設工事⇔不動産」「IT⇔人材」の動きがトップ3であることは変わりません。興味深いのは、「IT」の人材の動きが相対的に大きくなっていることです。
2019年 転職比率
- IT→コンサルは53% コンサル→ITは47%
- IT→人材は64% 人材→ITは36%
2020年 転職比率
- IT→コンサルは62% コンサル→ITは38%
- IT→人材は81% 人材→ITは19%
転職全体ではダウントレンドが続いていますが、IT業界の知識を持つ営業職のニーズは高くなっていると考えることができます。