デジタル化目的にSFA導入も、半数の支社で活用率が30%以下に
前稿では、「業務標準化・システム定着化」に必要な6つの手順と「3W1H」を活用した具体的なアプローチについてご紹介しました。本稿では、この手法を実際に用いて著しく業務標準化・システム定着化の率が向上した消費財メーカーA社の事例をご紹介します。
まず、A社の概要は下記のとおりです。
A社の概要
- 商材:消費者(一部事業者も)が活用する耐久消費財
- チャネル:A社が自グループの卸企業を介して小売に販売(セルイン)し、小売が消費者に販売(セルアウト)
- 営業拠点:日本全国に約300拠点
- 営業担当者数:約1,200名
- 営業スタイル:ルート営業
A社では、2019年からSFAシステムを導入しました。主たる機能は、日々の営業活動で得た得意先情報・商談情報を営業担当者が営業所のマネージャーに共有し、マネージャーが承認およびコメントの記入を実施するというものです。それまでA社では表計算ソフトをベースとした日報で業務報告を実施していましたが、デジタル化が必要であるとの本社営業企画部門の判断からSFAを導入しました。
しかし、導入後に全国で操作説明会を実施したものの、活用率はなかなか向上しませんでした。次のグラフは、支社ごとのシステム活用率、すなわち顧客訪問後の日報・得意先情報入力を一定以上の割合で実施している営業担当者の割合を示したものです。半数の支社でシステム入力率(業務実施率)が30%を下回っていることが分かります(赤のグラフは活用率30%以下の支社)。
全体的に、一定程度活用できている支社とほぼ活用できていない支社が明確に分かれており、ほぼ0%の支社も存在しています。この状態を鑑み、まずはシステムが活用されていない原因を探るために、活用率が30%を下回っている支社の営業所に対してインタビューを実施し、現状業務の正確なプロセス(本社が想定している業務フローとの乖離箇所)やシステム活用上の課題、普段から感じている業務の課題等を明確化しました。
その結果、主に3点が明らかになりました。