中小企業の7割が法務不在 理由は「担当者を置くほどの問題がない」
はじめまして。契約書レビューAIクラウドサービス「り~が~るチェック 」を展開する株式会社リセの藤田と申します。私は約18年間、国内最大手の法律事務所で弁護士として国内外の企業間紛争に携わった後に起業し、現在は代表取締役ではありますが、営業活動も行っています。
法務不在の企業においては、トラブルが生じるたびに営業担当者が対応を求められることが多いです。実際に私が携わった紛争でも、元となる契約の締結は現場の営業担当者が行っていた例が多かったです。さらに、コロナ禍においては予測できない事態が多く、すでに営業担当者には多大な負担がかかっているということも予測できます。
そこで本連載の前半では「法務担当不在企業の営業組織が把握しておくべきコロナ禍に潜む契約リスク」を解説します。
まず、契約書文化の変化について説明します。日本ではこれまで、契約書でガチガチに取引内容を取り決めておく文化はありませんでした。たとえ契約書を交わしても、基本的な内容を盛りこむだけ。問題が起きたら双方で話し合い、落としどころを決めるケースがほとんどでした。実際に20年前、日本有数の一流企業同士が半分ずつ出資し合うジョイントベンチャーを立ち上げた際、契約書は2枚だった、という話もあります。
しかし、この10〜20年の間にビジネスはグローバル化され、スピードを重視するものに変容してきました。それにより、トラブルが起きたあとに「まあまあ」と話し合いで解決するスタイルは成立しづらくなってきたのです。米国やイギリスなどの契約文化が根づく国々との交渉も増え、トラブルを回避するために契約書を交わすケースが徐々に増えていきました。大きな会社ほど法務部が業務を担い、弁護士などの専門家に協力を仰ぎ、契約書に明記する権利交渉を綿密に行うことで、トラブルを減らしていったのです。
ところが、中小企業の7割が法務不在というデータもあります。その理由は「担当者を置くほどの問題がない」が53%を占め、「適当な人材がいない」「予算不足」は合わせると30%にものぼります。ただ、問題が起きて紛争にまで発展すれば、多大な労力とコストを費やすことになります。今後、企業において法務の知識やスキルはビジネスの生命線になっていくといっても過言ではありません。