営業ノウハウと同じく法務ノウハウの蓄積も重要
営業担当者にとってSalesforceのような営業支援ツールは欠かせない存在かと思います。情報を共有・管理することで問題点を抽出し、各営業が顧客の課題をより深く捉えた提案をつくったり、「売れた過程」を記録することで成功事例を蓄積し、自社ならではのモデルケースをつくったりするなど、積極的に活用している営業組織も多いのではないでしょうか。
そういった営業支援ツールが普及する一方、社内での法務情報の共有・蓄積を支援するツールや文化は今までありませんでした。これまでは原則出社の企業も多かったため、何かあればノウハウを持つ人に相談することもできましたが、リモートワークが浸透し始め、ノウハウをアウトプットする機会も少なくなり、さらに属人化が加速してしまいます。
いち営業担当者の裁量に委ねず、法務上の情報を会社として共有・蓄積し、それを誰もが使いこなせるようにするだけで「会社の資産」になっていきます。営業ノウハウのように、法務のノウハウも社内で情報を共有・蓄積していくことが企業には求められているのです。
明日から始められる、法務ノウハウ蓄積術
そこで、どのような情報をどのように蓄積すれば法務ノウハウとして貢献できるのかを解説します。まず、特定のツールに契約書やひな形をアップしましょう。通常これらは担当者のデスクトップだけに保存されている場合が多いため、全担当者がすぐに活用できるように共有用のツールにアップしておくことをおすすめします。
ツールは、契約書管理に特化したリーガルテックツールもおすすめですし、まずはGoogleドライブなどでも問題ないです。さらに、トラブル対応中や交渉中の段階で、次のような情報を該当する契約書やひな形に「すぐに書き込む癖」をつけることが重要になります。
蓄積していくべき情報の例として、まずは「相手方から条件変更の交渉を受けた際の返し方」があります。契約相手によってフォーマットが異なることで、新しく登場した条項を判断できず、出された条件を飲むしかないケースや、そもそもどのように交渉していいのかもわからないということもあるかと思います。そのような場合、過去の契約書にやりとりの事例があると参考にしやすいです。
そして「トラブル内容」も貴重な法務ノウハウになります。仮に同じような契約を繰り返しているなら、契約上もめやすいポイントも同じケースがほとんどです。たとえば「商品の売買契約」で、衣料品だとここが問題になりやすい、文房具だったらキャラクターの扱いについての処理が必要など、商品特性ごとの「もめそうなポイント」や「実際にもめたポイント」、そしてそれらをどのように解決したかを明確に記録しておくことをおすすめします。
大きなもめごとになって正式に企業間の紛争にでもなれば人の心に残りますが、「ちょっとした」もめごとで、相手企業にお金を多少払うなどして処理されたケースは記憶にも残らないため、同じようなトラブルを繰り返すことは多々あります。だからこそ担当者が代わっても後任に引き継いでいける情報が蓄積できていれば、同じような契約トラブルに巻き込まれるケースは減っていくはずです。