商談のオンライン化で対面商談のハードルが上がる
そもそも、新型コロナウイルスの流行により起きた変化は3つ――(1)在宅勤務やテレワークの普及、(2)イベントや会議のオンライン化、(3)顧客訪問/来訪の自粛――だ。こうした変化を背景に、「営業活動は非対面化が進み、オンライン商談が普及してきた」と松浦氏は述べる。
前提として抑えておきたいのは、事業活動における「対面頻度」と「対面重要性」は業種ごとに異なっていたこと。たとえば、製薬業界の営業であるMRや、飲食業、生命保険、不動産、自動車の販売などでは対面頻度が高く、かつ対面重要度が高いとされる。一方、宅配や、医療費や日用品の小売、ITサービスなどでは、対面頻度こそある程度高いものの、対面の重要度はさほど高くない傾向がある。さらに、通信販売やオンライン専業の生命保険などは、対面の頻度も低く、対面の重要性も低い傾向がある。
このうち新型コロナ禍で、急速に対策を迫られたのは、対面頻度が高く、対面重要性も高いグループである、とアステリアは分析。こうした業界では、営業フローを訪問なしで完結させるオンラインセールスの手法が採られたり、インサイドセールス対面営業を組み合わせたハイブリッド型のスタイルが実践された例もある。また、ネット専業のスタイルを採用し、そもそもの営業スタイルを変革させるアプローチへの移行も、業種によっては有効だという。
松浦氏は、ベルフェイスによる「オンライン商談に関する実態調査(2020年5月18日)」の調査結果を引用。“52%の企業がオンライン商談を導入済み”であること、そして、“そのうち77%の企業が、オンライン商談を実施または本格化したのは感染症対策が理由”であることを紹介した。
さらに、同調査では、オンライン商談導入の成果についても調べられている。「移動コストの削減」に関しては、訪問と比べてオンライン営業のほうが成果は上がったとする回答が約4割に上る一方で、「リードタイムの短縮」「商談数の増加」「受注・成約率のアップ」「売上増加」「新規顧客拡大」といった営業における重要な指標に関しては、訪問と比べて成果が上がったと感じている割合が2割未満に限られており、訪問と比べて成果が下がったとする回答の割合も高かった。
松浦氏は、「こうした調査結果から、多くの企業が必要に迫られ、急いでオンライン商談を導入したことがわかります。そして、営業成果に関しては十分な効果が上がっていないのです」と指摘した。
また、こうした事象の裏で「商談のオンライン化により対面商談のハードルが上がっていることが影響している」とも分析。顧客側のオンライン商談への心理的な抵抗が下がったことで、「対面の商談の前に、まずはオンラインで」と求められるケースも増加したと考えられるが、オンライン商談では、対面のように表情や仕草、雰囲気などの非言語的な情報を得づらい。語られる内容や語り方といった商談そのものに、より注目が集まり、従前の商談スキルだけでは通用しないケースが増えているのだろう、と解説した。つまり、オンライン商談でいま求められているのは、商談スキルそのものを向上させる施策なのだ。