帝国データバンクが「新型コロナウイルス感染症に関する調査」の結果を発表した。同調査は 2020年2月以降毎月実施しており、 今回は8回目の調査の結果となる。
今後、業績へマイナスを見込む企業は80.6% 緩やかに減少も、依然として8割台に
コロナ禍により自社の業績にどのような影響があったかを尋ねた。結果、『マイナスの影響がある』(「すでにマイナスの影響がある」と「今後マイナスの影響がある」の合計)と見込む企業は80.6%となり、8月から1.9ポイント減、5カ月連続で減少している。内訳を見ると、「すでにマイナスの影響がある」は68.4%で、7月時点からほぼ横ばいで推移している。一方、「今後マイナスの影響がある」は12.3%で、8月から2.1ポイント減少。先行きに対する不透明感の和らぎが数値に示されている。
また、「影響はない」と回答する企業は11.2%だったほか、『プラスの影響がある』(「すでにプラスの影響がある」と「今後プラスの影響がある」の合計)は3.6%となり、前月とほぼ横ばいとなった。
『マイナスの影響がある』企業を業界別に見ると、『運輸・倉庫』が86.9%でトップ。以下、『製造』が84.5%、『卸売』が82.8%、『不動産』が81.1%と続いた。より細かく業種別に見ると、「旅館・ホテル」が96.8%となり、6カ月連続でもっとも高い。次いで、アパレル関連の「繊維・繊維製品・服飾品小売」が93.5%、イベントの中止・延期によるポスターなどの減少や企業のペーパーレス化による影響がみられる「出版・印刷」が92.9%と、続いた。
業績へプラスの影響を見込む企業、小売業や食料品関連が上位に
『プラスの影響がある』と見込む企業を業界別に見ると、『小売』が11.1%。内訳となる「すでにプラスの影響がある」の7.4%、「今後プラスの影響がある」の3.7%を含めてトップとなった。次いで、『金融』が4.7%、『卸売』が4.4%、『製造』が3.6%と続く。 業種別では、スーパーマーケットなどを含む「各種商品小売」が35.6%で、7カ月連続でもっとも高くなった。次いで、「飲食料品小売」が17.3%、「医薬品・日用雑貨品小売」が13.0%と、小売業が上位に挙がった。
2020年度の業績見通しは56.0%が「減収減益」を見込む
2020年度(2020年4月決算~2021年3月決算)の業績見通しについて尋ねたところ、「増収増益」を見込む企業は10.5%となり、2020年3月調査時点から3.0ポイント減となった。一方、「減収減益」は56.0%となり、同11.6ポイント増となった。3月以降、緊急事態宣言などコロナ禍による影響は拡大し続け、2020年度の上半期終了時点では企業の半数以上が減収減益を予想する結果となった。
減収減益を見込んでいる企業を業種別に見ると、「旅館・ホテル」が87.1%でもっとも高い。次いで、「娯楽サービス」が80.6%、「飲食店」が80.0%など、個人向けサービスの業種が上位に。また、自動車需要が落ち込み、「輸送用機械・器具製造」は77.3%という結果に。全体の減収減益見込みは3月調査比で11.6ポイント増となったものの、3月時点より業績見通しが下振れしている様子がうかがえる。
コロナ禍きっかけに取り組み始めた働き方は、「オンライン会議の導入」がトップ
新型コロナウイルス感染拡大にともなう働き方改革の取り組みを尋ねる設問では、「コロナ禍をきっかけに取り組みを開始した」働き方として、「オンライン会議の導入」が39.0%ともっとも高く、次いで「在宅勤務の導入」が33.9%、「時差出勤・フレックスタイム制の導入」が25.7%と続いた。また、「新型コロナ拡大前から取り組んでいた」の項目では、「ペーパーレス化の推進」が26.7%、「インターネットによる受注・販売の強化」が21.5%と、割合が2割を超えていた。
両項目を合計した『現在取り組んでいる』では、「オンライン会議の導入」が53.7%でもっとも高く、次いで、「時差出勤・フレックスタイム制の導入」が39.5%、「在宅勤務の導入」が39.2%と続いた。また、「今後取り組む予定」では、「ペーパーレス化の推進」が28.3%ともっとも高くなる結果に。
働き方を変えるうえでの問題点は「リモートワークに適さない業務が主である」がトップ
新型コロナウイルスの影響によって従来とは異なる働き方が求められているなか、働き方を変化させるにあたっての問題点(複数回答可)を尋ねたところ、接客や工場における生産業務など「リモートワークに適さない業務が主である」が74.5%ともっとも高く、『製造』『小売』『農・林・水産』『建設』では8割を超えていた。次いで、「情報セキリュティが確保できない」が44.6%、「ペーパーレス化が不十分」が43.8%、進捗や繁忙度など「従業員の業務状況の把握が難しい」が43.4%、「リモートワークができる従業員とできない従業員の格差・不公平解消が困難」が41.1%、と4割台で続いた。
調査概要
- 調査期間:2020年9月15日~30日
- 有効回答数:1万1,689社