連携強化のために行った「共通言語」の定義
――現在までのキャリアと担当されている役割から聞かせて下さい。
Web広告の営業や運用に携わった前職を経て、2017年2月にベルフェイスにセールスとして入社しました。当初は新規開拓を中心に進めてきましたが、2018年10月にマーケティングチームが発足したことを機にそちらに異動し、現在はインサイドセールスチームのマネジメントを担当しています。具体的には電話、メール、Marketo Sales Connect(MSC)、ベルフェイスを駆使して、商談の設定からセールスに渡すまでの全体のマネジメントを行うのがミッションです。
MSCを導入したことに関係しますが、マーケティング部門ができて一気にリードが増えたもののステータスを管理するチームがいないがため商談につなげることができないという状況に直面しました。解決のために2018年11月にインサイドセールスチームを立ち上げ、現在に至ります。
――立ち上げ当時のインサイドセールスチームが抱えていた課題はどんなものですか。
リード量が増大するなか、優先順位をつけて電話をかけるための共通言語がなかったことが根本的な問題でした。解決のためにはリソースを増やすという選択肢もありますが、採用人数を優先すると育成に時間がかかるという問題があります。それよりはむしろハイパフォーマーを多く採用したい。そこで採用を並行して進めながら、限られたリソースで効率的に商談化を進めるアプローチを選択したのです。
インサイドセールスチーム立ち上げのタイミングで試行錯誤し、共通言語として考えたのが、リードランクとリードのステータスです。このふたつをマーケティング、インサイドセールス、セールスの共通言語として定義すれば、マーケティングとセールスの連携を効率的にできると考えました(図1・2)。
Marketo Sales Connectを攻めのアプローチで活用
――MSCを導入した理由は3つあると聞いています。最初のメールの行動履歴の可視化についてはマーケティングオートメーションであるMarketo Engageで可能ではありませんか(図3)。
もちろんナーチャリングで顕在化している見込み顧客に対して電話をかけるというフローを実施できていたので、その可視化はできていました。ただインサイドセールスとしてはもう少し効率的で、セールス寄りの攻めのアプローチの必要性を感じていました。一斉配信でメールを送った中からのアプローチではなく、Aさんが今日かけるコールリストが40件あったとしたら、朝いちばんにMSCからメールを送り、開封を確認してから電話をするアプローチを実践したいと考えたのです。
――マーケティングからだけではなく、インサイドセールスからもメールを送り、効率的にアプローチするということですね。
はい。また、インサイドセールスチームは育成の場という特徴もあり、人事異動が頻繁にあります。今月いた人が来月に違う部署へ異動していることも珍しくありません。導入の2つめの理由として「Salesforceの活動履歴に同期」を挙げていますが、各インサイドセールスが顧客へどうアプローチしたかという活動履歴を残す必要がありMSCではそれが可能でした。
メンバー視点で優れている点をもうひとつ挙げると、管理画面に入らなくてもテンプレートの選択やメール配信ができることですね。新しいメンバーが入ってきてもツール操作で混乱することなく、Gmail上ですぐに使うことができます。
――MSC導入にあたり、メールアプローチを強化したことがわかりました。効果を高めるためにどんな施策を検討したのでしょうか。
MSCはコンタクト率を高めるためのツールだと思います。私たちのターゲット顧客は企業の営業責任者・営業メンバーですが、その人につながる時間帯に電話をかけることが商談化にはとても重要です。というのは、営業担当者は日中にオフィスにいないからです。いても数時間程度。もっとも電話がつながるゴールデンタイムは朝いちばんと夕方(17:30〜18:30)の帰社するタイミングです。非ゴールデンタイムにいかにコンタクト率を上げる工夫ができるかが勝負の分かれめになるわけで、電話前に開封を確認することは重要です。Marketo Engageからでも開封確認はできますが、MSCのほうがより早く確認できますし、配信前に効果的なテンプレートの検証ができることも便利です。
コンタクト率とメール工数で成果
――コンタクト率を高めるという課題にMSCで対応していることがわかりました。導入と活用はどんなプロセスで進めたのでしょうか。
プロセスの要点は、新しいもの好きでテクノロジー活用が得意な人をオーナーにしたことです。そのオーナーがプロジェクトリーダーとなり、リードステータスに合わせたメールテンプレートを用意し、e-bookやセミナーから流入している特定リードの検証から始めました。テンプレートはオーナーが作ります。2・3パターンで運用してもっとも効果が高いものを選び、改善を加えるプロセスを繰り返していきました(図4)。
――MSCを導入して得られた具体的な成果について教えて下さい。
成果は大きくふたつあります。
- コールコンタクト率の改善:時間帯を最適化しても30%だったものが40%に改善
- メール工数の削減:1通ずつ送信していたため、毎月10時間かかっていたのが毎月0.4時間にまで短縮
このふたつの成果を得たことで、当時のインサイドチームメンバー4人で、新しく84件の商談化を実現できました。メール工数削減で電話の数が増え、良いサイクルが回り始めたと考えています。
――メールのテンプレート共有と可視化を進めると、ハイパフォーマーとローパフォーマーが見えるようになりませんか。
会社方針としては全員をハイパフォーマーにすることを重視しています。MSC導入でコンタクト率が改善しましたが、実はGmailを使うだけでもコンタクト率を高めることはできるのです。先ほど導入前のコンタクト率が30%という話をしましたが、メールをまったく使わないと15〜20%に低下します。そのぐらいメールを使うか使わないで差が出るのです。
電話営業の経験があっても営業としての「メールノウハウ」がある人はそんなに多くないのです。そのためまず、営業にメールを活用してもらう意味から理解してもらう必要があるんです。MSCで可視化したが効果があれば、それを見せて「すでにトークはうまいので、メールを伸ばせばもっとアポがとれる」と説明することができます。インサイドセールスだからといって、電話だけでいいとは考えていません。電話とメールどちらも大事で、もっとメールの比率を高めても良いと思っているぐらいです。
ベルフェイス流!テクノロジー活用継続の秘訣
――メールの話から一旦離れますが、ベルフェイスではどうテクノロジーと向き合っているのでしょうか。
ツールは効率化のためのものだと思います。Marketo EngageはリードをMQL化するためのものですし、MSCはインサイドセールス個人のメール工数削減とコンタクト率を改善するためのものと捉えています。当社の営業組織の主幹をなすツールはSalesforce Sales Cloudなので、そもそもツールを検討する際にはSales Cloudと連携できるかは重視しますが、良いツールであれば多少価格が高くてもまずは活用してみるようにしています。
私たちが参考にしているインサイドセールス組織はセールスフォース・ドットコム、アドビシステムズ(旧マルケト)、ユーザベース、FORCAS、Sansanです。この5社の組織やプロセスから学べるところは学びたいと考えていて、どんなツールを使っているかにも常にアンテナを張っています。使っているツールが同じ場合、お互いの共通課題を話し合うときもレベル感が揃っているので、有意義な話を聞くことができますね。
――ツールを継続的に活用していくために必要な心構えや体制についての考えを聞かせてください。
オーナーを立てて、常に責任の所在を明確にすることです。誰かが辞めると使われなくなるようなツールにしないためには、プロジェクトとして活用を進めることが必要です。
また、オープンに情報収集ができる体制も重要だと思います。自分たちが情報を開示すれば、新しい情報がどんどん入ってきますし、自分だけで考えることには限界がありますから、使っている人たちの話を聞いて参考になりそうなものを見つけてみるのが良いのではないでしょうか。あとは計画を固め過ぎず、とりあえず導入してから改善を繰り返すことです。
テクノロジーは会社やチームに生産性向上をもたらします。その分、新しいことにチャレンジできる時間が生まれます。ベルフェイスも営業の生産性向上に役立つサービスを提供しています。
あると嬉しいメールテンプレートのサジェスト
――最後にこれからのMSCに期待することと、ベルフェイスとしてチャレンジしたいことをお話し下さい。
MSCの機能的については満足しています。強いて言えば、メールのテンプレートのサクセス事例を管理画面で見ることができると嬉しいです。お客様の属性に合わせて、件名をサジェストしてくれるようなイメージです。自社の成功例から学習した提案に加えて、他社のベストプラクティスを提案してくれるようになると良いと思います。インサイドセールスにおける電話のテクニックやノウハウのコンテンツはあっても、メールのテクニックやノウハウを得られるコンテンツは意外にありません。ぜひそこをサポートしてもらいたいですね。
また、MSCの機能では「セールスシナリオ」の活用を考えています。営業版の「ステップメール」のような機能です。現在のベルフェイスのお客様はSMBが中心で、大企業の開拓を課題としているので、新たなアプローチで成果を出す取り組みを進めていきます。
――ありがとうございました!
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