狂ったコンパスを持つ営業はとんでもない場所へ……
あなたは登山をしたことがあるだろうか?
私は数回あるが、いずれも山道があり、そこを歩いて行けば頂上に到着するタイプの山だった。高さも1,000メートル以下で、時間さえかければ誰でも到着できる。ほとんど準備せずに気楽に臨んだものだった。
しかし、これが道のない険しい山だったらどうだろうか?地図や食料、そして方向を示す「コンパス」を必ず準備するはずだ。山で方向を見失えば命とりになる。コンパスは必需品であるが、もしそれが狂っていたら……。どこへ向かっていいのかわからなくなり遭難してしまうだろう。山登りの成功はコンパスにかかっているのだ。
これは営業活動でも同じことが言える。営業のコンパスとは「価値観、考えかた」といったもの。結果を出している営業スタッフでもコンパスが狂えば、とんでもない場所にたどり着いてしまう。私自身、何度となく進む道を間違ってきた。コンパスを持っていなかったわけではない。しかし、それが狂っていた。
ダメ営業スタッフ時代の考えかた
まずは営業活動に対する考えかた。ダメ営業スタッフ時代は“お客様がその場で契約してくれるのがいちばん”という考えを持っていた。たしかにその場で決まれば効率がいいし、これほど楽なことはない。商品によっては即決の場合もある。しかし、私が扱っていたのは住宅。一般的に一生で、いちばん大きな買い物だ。そんな大きな買い物を誰が即決するだろうか?にもかかわらず、初めて会ったお客様に「私に任せてもらえませんか」などと迫ったこともある。もちろん、ドン引きされたが。過去の私は本当にバカだった。これは相当ズレた考えかただといえる。
また、価値観もかなりズレていた。お客様よりも会社の利益、そして自分が楽になることばかり考えていた。もちろん「お客様の役に立つ行動をすべきだ」ということは知っていた。しかし、結果が出ない以上、背に腹はかえられない。お客様に対して「良いことだけ伝え、こちらか不利になることは一切言わない」という方針をとるしかないと思っていたのだ。
デメリットを隠しメリットだけを伝えれば上手くいくのか?そんなことはない。これでうまく行くことなどほぼなかったし、仮に隠しごとをして契約したとしてもトラブルに。ヘビーなクレームに悩まされたものだ。とにかく長年の間、私のコンパスは狂った方向をさしていた。だからこそどんな活動をしても、自分が望んでいない場所にたどり着いてしまったのだ。