新規事業がぶつかりやすい壁と「0→1営業」の本質を解説した前編はこちらから!
「売る」ことから始める仮説検証
新規事業の成功確率を高めるうえで、私がもっとも強調したいのは、営業活動を単なる販売チャネルではなく、仮説検証の場として設計するという発想です。「いや、我々はすでにヒアリングやインタビューは徹底的にやっている」と思われる方も多いかもしれません。確かに、昨今では「まずは顧客の声を聞く」というプロセスが定着し、机上の空論だけで開発を進めるケースは減ってきました。
しかし、多くのプロジェクトが「インタビューでの『欲しい』」と「商談での『買います』」の間にある、巨大な断絶に気づいていません。インタビューの場では、相手は友好的であり、「あったら良いですね」というポジティブな意見をくれがちです。しかし、いざ営業として「では、この価格で契約いただけますか?」と踏み込んだ瞬間、相手の態度は一変します。「予算がない」「決裁を通すほどではない」「今の業務フローは変えられない」──。
この、対価を求めた瞬間に初めて現れる「拒絶」や「躊躇」こそが、事業開発におけるもっとも重要な真実です。「インタビューでは高評価だったのに、リリースしてみたらまったく売れない」という悲劇は、顧客接点を「調査(=意見をもらう場)」として行い、「商談(=決断を迫る場)」として行わなかったために起こります。
だからこそ、完成度が不十分なタイミングからでも、「仮説を持って売りにいく」ことが重要です。最初の商談は、「どうすれば受注できるか」を考える場であると同時に、「自分たちの仮説がどこまで現実と合っているのか」を確かめる場でもあります。顧客はどの部分に反応しているのか。想定していた課題設定そのものが、顧客の認識と一致しているのか。導入の意思決定には誰が関わっているのか。こうした情報は、会議室での議論からも、対価を求めないインタビューからも決して出てきません。

