機能別組織への再編で「営業の専門性向上」を目指す
安部(スマートキャンプ) 菊地さんは2023年にSCSKへ入社後、2年弱でインサイドセールス組織を立ち上げています。その組織改革の背景と具体的な内容についてお聞かせください。
菊地(SCSK) 私が担当するAIネイティブなERP「PROACTIVE」の事業は32年の歴史がありますが、2023年までは非常に属人的な組織でした。プロダクトアウト型の営業スタイルで顧客管理も十分でなく、マーケティングとフィールドセールスの勘と経験に頼る受注プロセスが常態化していたのです。
しかし現在の市場では、お客様の課題解決に焦点を当てたソリューション提供への転換が求められています。そこで2024年、ストーリーやメッセージを改めて「PROACTIVE」をリブランディングするとともに、営業・マーケティング組織の改革に着手しました。
具体的には、営業部、開発部、第一部、第二部……といった垂直統合でリソース管理を行う組織体制から、機能別組織に再編したのです。事業戦略立案や事業管理基盤の構築などを担う「ビジネスストラテジー&ディベロップメントユニット(BDU)」、提案やデリバリーを担う「カスタマーサービスユニット(CSU)」、プロダクト戦略・開発・運用を担う「プロダクトユニット(PU)」の3つに組織を分け、それぞれの専門性の強化を図りました。
その中で、営業組織の専門性を高めるには、市場の潜在的なニーズを的確に捉え、それを具体的なニーズや需要へ転化させて、新たなビジネス機会を発見していくプロセスが重要です。この一連の流れを円滑に進めるため、インサイドセールス組織を新設したのです。現時点では、インサイドセールスをマーケティングと一体化した組織として設計し、ブランド価値の視点を持ちながら、最適なセールスタイミングを狙える活動を目指しています。
安部 垂直統合型から機能別組織への転換は、現場の混乱を招いたのではないですか?
菊地 大混乱だったでしょうね。「MQL(Marketing Qualified Lead)」や「SQL(Sales Qualified Lead)」など、これまでになかった概念に困惑していました。しかし方針を示したあとは、現場で構築を進めてくれたのです。プラットフォームの構築自体は3~4ヵ月で完了し、約1年をかけて成熟度を高めてきました。
SCSK株式会社 執行役員 PROACTIVE事業 本部長 菊地 真之氏
ITおよびデジタルマーケティング業界で15年以上の経験を持ち、日本企業のデジタル支援と事業収益の拡大に尽力。SAPジャパンを経て、アドビの戦略顧客部門本部長、ワークデイの執行役員 営業統括、Braze株式会社の代表取締役社長を歴任。2023年よりSCSK株式会社 執行役員として、SCSK自社製知財であるPROACTIVEを中核としたオファリングビジネス事業の責任者を務めている。「夢はでっかいほうが良い。見失わないから。」を座右の銘に、日本企業のトランスフォーメーションを支援している。
横ぐしのデジタルセールスで新たな「型」を構築
安部 キヤノンMJでは、「高い提案力と営業力がある会社」というイメージが強いですが、インサイドセールス導入とDXを進めた背景には、どのような背景があったのでしょうか。
林(キヤノンMJ) 日本全体の就労人口減少、8掛け社会の到来という課題を前に、従来の「人がいる」ことを前提とした強い営業力の維持に強い危機感を覚えました。この危機感から営業DXに着手し、インサイドセールスの組織機能や役割を検討してきたのです。
当社の事業ユニットは、顧客セグメントごとに「コンスーマ」「エンタープライズ」「エリア」「プロフェッショナル」の4つに分かれており、3つのユニットにはそれぞれインサイドセールス組織機能が存在しています。今回チャレンジしたのは、それとは別に、商品事業に紐づく各商品企画におけるインサイドセールス機能への変革です。
横ぐしで事業部門を支援するマーケティング部門にもインサイドセールス機能を設置し、顧客層別、業務課題別、サービス単位別でのデジタルセールスを推進したのです。営業が「先発完投型」で営業プロセスを進めるスタイルと並行して、新たにデジタルセールスによって有望リードを醸成し、最後に営業がクロージングする「型」の構築を目指しました。
キヤノンマーケティングジャパン株式会社 ソリューションデベロップメントセンター部長 林 寛之氏
エンジニア職として入社し、マーケティング担当を経て、金融営業本部に転属し、プリセールスとしてメガバンクや生損保の全社規模案件を複数受注。プロジェクトの実行推進、マネジメントに携わる。その後、経営企画本部 グループITS戦略推進部長に就任。現在は、顧客起点の新たなソリューション創出をミッションとする戦略策定、企画立案と実行推進を担う部門の部長に就任し、ビジネスアーキテクトやサービスデザイナーとして従事。その他、出資、M&A先企業とのPMIなどに関与。システム監査技術者、システムアナリスト、 ITコーディネータ
安部 強い営業組織を持つ企業では、「なぜ、これまでの商談プロセスを変えなければいけないのか」という声もあったのではないでしょうか。
林 そうですね。やはり抵抗感がありました。先発完投型で、個々の強い営業スキルに加えてプリセールスやエンジニアをアサインし、チームでITソリューションを提案していく商談プロセスにより、成功しているためです。
よって、商談の初期からクロージングまでをチームで実施しているなか、中小規模のサービス案件とはいえ、商談プロセス初期の案件発掘フェーズ、商談中盤の案件醸成フェーズの変革を求めるのは容易ではありませんでした。
ただし私たちは、営業部門に「これまでの営業スタイルを変えてほしい」というお願いはしていません。並行して新たなプロセスをつくるので、営業部門にはそれに協力してほしいというスタンスで臨んでいます。
安部 リーダーが強い意志を持って進めないと、改革は難しいのだと改めて感じます。

