AI浸透を加速させるのは、業務改善への「強い想い」
──企業のDX推進者やAI活用推進者となる人は、どのようなスキルを持っているべきだと思いますか。

重要なのは、技術的な知識よりも「業務改善への熱量」だと考えています。自らAIなどのテクノロジーを活用し、それを周りに薦めるエバンジェリスト的な人たちは、共通して「目の前の業務に対する小さな悩みが、システムや仕組みで解決されていくこと」自体に相当な熱量を持っています。
とくに、AIのチューニングは非常に地味な作業です。DXの成果に喜びを感じるモチベーションがなければ、こうした地道な作業には耐えられません。
もちろん、AIの技術的な知識があれば、「こういうことができるんだ」という目線が広がり、活用の幅が広がることは間違いありません。しかし、「私はこの非効率な業務を改善したいんだ」という強い思いが根幹にあってこそ、AIを最大限に活かすことができると考えています。
銀行は「面」のビジネス AIエージェント量産化で利益最大化を目指す
──今後AI技術をどのように応用・発展させ、新たなビジネスや顧客価値を創出していきたいとお考えでしょうか。
今後、我々がもっとも注力していく技術はAIエージェントです。これまでの「聞かれたら答える」受動的な生成AIと異なり、AIエージェントは自動的に仕事の計画を立ててタスクを消化する、人に近い能力を持つようになります。私たちは、このAIエージェントの能力を最大限に活用すべく、量産化に向けた体制と仕組みづくりに注力しています。
新たな価値創出については、まったく新しいビジネスを立ち上げる「攻め」の戦略も重要ですが、私たちは、既存の業務プロセスをAIで代替し、相対的に収益性を高める戦略に大きな意味があると考えています。
その根拠は、みずほグループが大きな「面」でビジネスを展開している点にあります。銀行は、支店の数、お客様の数も多ければ、提供するビジネスも多岐にわたります。この広大な業務領域において、オペレーションをわずかに最適化するだけで、既存ビジネスの収益性を大幅に向上させることが可能なのです。
長期的にはAIが直接お客様と応対する未来も当然あり得るでしょう。しかし、今私たちが注力している「既存ビジネスの業務効率化」を続けていくだけでも、利益最大化や顧客価値の創出は十分可能だと考えています。

──戦略的にAIをビジネスに組み込む御社の事例は、多くの企業にとってヒントとなるはずです。本日はありがとうございました!
