事例:標準仮説提案資料を導入したSaaS企業
実際のケースをご紹介します。あるSaaS企業では、初回商談の多くが「デモを見せて終了」という流れになっていました。商談数は増えているのに受注率が伸びず、営業マネージャーは頭を抱えていました。
そこで、全員が共通で使う「標準提案資料」を整備しました。構成はまさに「想定課題 → 解決策 → 導入効果 → 事例」。メンバーには「デモを見せるのはこの流れのあと」と徹底させたのです。
すると、顧客の反応が劇的に変わりました。以前は「検討します」で終わっていた初回商談が、「なるほど、次回は他部署も同席させたい」「詳細に比較したいので追加情報をほしい」と、顧客からの積極的な反応と具体的なアクションにつながるケースが増えたのです。
結果、初回商談から2回目以降へ進む比率は約1.5倍に改善しました。
営業マネージャーが取り組むべき3つのステップ
営業マネージャーがこの型をチームに根づかせるためには、次の3つのステップを踏むことが重要です。
ステップ1. 資料の共通フォーマットをつくる
すべてのメンバーが同じ流れで商談を進められるように、ターゲット層ごとの標準仮説提案資料を提供する。
ステップ2. 個社別にカスタマイズさせる
慣れてきたら「想定課題」の部分はメンバーに個社別に作成させるように促す。
ステップ3. 定期的に振り返りを行う
「誰のどの提案資料が刺さったか」を共有し、資料を進化させ続ける。
こうして“標準化と個別化の両立”を実現すれば、チーム全体の突破率は底上げされます。
まとめ:初回商談を「突破」するために
アポの数は十分に確保できるようになった今、次に問われるのは“質”です。とくに、初回商談をどう前に進めるかが勝負どころになっています。
初回からデモや機能説明に終始するのではなく、「想定課題 → 解決策 → 導入効果 → 事例」というストーリーで顧客のニーズを喚起し、自然な流れでプロダクトやサービスを位置づける。これこそが、営業マネージャーがチームにインストールすべき「仮説提案資料の型」です。
さらに重要なのは、この標準仮説提案資料を「完成品」として固定するのではなく、「仮説 → 行動 → 検証 → 改善」のサイクルを回し続けることです。最初はマネージャーがつくった仮説に基づく型を現場で試し、顧客の反応を踏まえて修正を重ねる。その積み重ねによって資料は進化し、チーム全体の突破力が磨かれていきます。
初回商談を突破できる組織は、確実に受注率が高まります。標準化された型をベースにしながら、現場での学びを組織知に変える。この仕組みを回せる営業組織こそ、これからの時代に勝ち続けることができるのです。
次回は、さらに一歩踏み込み、「商談そのもののコミュニケーションをどう標準化するか」について解説します。提案資料だけでなく、会話の流れや質問の仕方を型化することで、誰でも成果を出せる営業組織をつくるためのポイントをお伝えします。