必要なのは「顧客」を主語にした商談資料
では、初回商談を突破するために営業マネージャーがチームに教えるべきことは何でしょうか?
それは、顧客の課題を出発点とした仮説提案資料を標準化することです。言い換えれば、「プロダクトを主語に語る」のではなく、「顧客を主語に語る」流れをつくるということです。
多くの営業は、つい「このプロダクトにはこんな便利な機能があります」「こんなにすごいサービスなんです」とプロダクト中心で話を組み立てがちです。しかし、それでは顧客が「自分ごと」として話を受け止めにくく、商談が前に進みません。
顧客が「そうそう、まさにその課題で困っていたんだよね」と感じる流れを設計することこそが、初回商談の突破率を高めるカギになります。
そのために効果的なのが、次の4ステップで構成された「標準提案資料」です。
- 想定課題:「この業界のこの立場のお客様においては、このような課題を抱えていませんか?」と仮説を提示する
- 解決策:「その課題に対して、私たちはこういう方法で解決できます」と示す
- 導入効果:「解決することで、具体的にこういう効果が得られます」と未来像を描く
- 事例:「実際に貴社と同業/同規模の他社ではこのように成功しています」と証拠を提示する
「想定課題」から始める
まずは、「この業界、この規模、この部門のお客様はこういう課題を持っているのではないでしょうか?」という仮説を冒頭で提示します。これは前回記事でお伝えした「業界別テンプレート」と同じ発想です。
本来であれば、1社ごとに「その会社固有の想定課題」を考えるのがもっとも効果的です。相手に「自社のことをよく理解してくれている」と感じてもらえれば、商談の入り口で大きな信頼を獲得することができるからです。しかし現実には、経験が浅い新人や若手ばかりのチームも多く、多くの営業マネージャーの皆様から、「各メンバー全員に顧客ごとに課題仮説を立てさせるのはハードルが高い」という声をよくお聞きします。
その場合は、まずターゲットとなりうる顧客層に共通してよく見られる課題をテンプレート化し、全員が同じ想定課題を使うところから始めましょう。
たとえば、ターゲットが大手製造業の情報システム部門で、セキュリティ対策を紹介したいなら、「工場システムを狙ったサイバー攻撃が増えている中で対策ができていない」や「海外含め拠点ごとにセキュリティレベルがバラつき、統制が難しい」といった、その業界特有の課題をいくつか明示しておくのです。
慣れてきたら、徐々に顧客ごとに情報を追加して個社別の仮説を織り込むように育成していきます。こうした段階的なアプローチが、チーム全体で仮説提案営業を浸透させるうえで非常に効果的です。
解決策・導入効果・事例の流れ
課題仮説を提示したら、それを受けて「我々はこう解決できます」と解決策を提示します。その後、解決した結果として得られる導入メリットを整理し、最後に実際に導入して成功している企業の事例を紹介するのです。
この事例紹介では、できるだけ商談先企業と同規模・同業種の事例を紹介しましょう。この事例は、公開事例でなくてもかまいません。
この流れが優れているのは、顧客の納得感が段階的に高まることです。
- 想定課題を共有 → 「たしかに自社にも当てはまる」
- 解決策を提示 → 「解決できるイメージが湧いた」
- 導入効果を解説 → 「投資する価値があると理解できた」
- 事例を紹介 → 「自社と同業の他社もやっているなら安心だ」
つまり、想定課題から事例までのストーリーを一貫して設計しておけば、顧客は自然と次のステップ(比較検討、詳細打ち合わせ)へ自然と進みたくなるのです。