「超個別化」「感情を動かす」 AI時代の営業の価値
不動産営業の現場においてAIやテクノロジーの導入が進む中、「営業職はなくなるのか?」という問いを受けることがありますが、私はむしろ逆だと考えています。
たしかに、価格査定や顧客属性の分析、マーケット予測、契約書の作成といった定型業務は、これからどんどんAIに置き換わっていくでしょう。
しかし、言語化されていない不安に寄り添い、顧客と深く対話し、信頼関係を築く、体温のある提案ができることこそが、人にしかできない仕事であり、営業という仕事がこれからも必要とされる理由だと思っています。

近年では、REITといった金融商品に加え、クラウドファンディングやセキュリティトークン(ST)などの新しい仕組みや技術を通じて、従来型の投資家以外にも不動産投資がより身近な存在になりつつあります。AIによる価格算出や市場分析、定型業務の自動化が進む中で、不動産投資そのものも変化し、スマホひとつで完結できるほど“手軽で身近な選択肢”へと進化を遂げています。
こうした「不動産投資の民主化」が進むなかで、営業の役割もまた、大きく再定義されていく必要があります。たとえば会社説明や商品案内であれば、AIアバターでも十分に対応できるかもしれません。ですが、顧客の言葉にならない不安に耳を傾け、背中を押してあげるような提案には、やはり“人”が必要です。
実際、私たちの現場でも「購入に至った理由は、なぜかこの人から買いたいと思ったから」と言われることがあります。商品知識やロジックではなく、“伝える人の熱”に動かされる場面を何度も目にしてきました。営業の引力とは、まさにそうした「熱量」に宿るものだと思っています
これからは、テクノロジーによるデータ活用と、人間による共感や対話を組み合わせた「超個別化」の提案力が問われるようになると考えています。顧客の価値観を丁寧にすくい取り、それに応じた提案をAIと協働しながらかたちにしていく。そんな営業こそが、次のスタンダードになっていくと私は感じています。