カスタマーインサイドセールスが担う活動と成果
CISが日常的に担う活動は多岐にわたります。たとえば、アップセルやクロスセルの打診、新サービスや機能の導入におけるPoC(=実現可能性の検証)提案、複数部署への展開打診、契約更新時の拡張提案、定期的な課題ヒアリングなどがあります。
これらの活動は、顧客の利用実態や業務課題を踏まえたうえで行われる必要があるため、表面的なトークスクリプトでは成果が出にくい傾向があります。そこで重要になるのが、「One to Oneマーケティング」的な営業視点です。
One to Oneマーケティングとは、属性や行動に応じて顧客ごとに最適化された提案を行う考え方で、画一的なコミュニケーションでは届かないニーズを捉えるための重要なアプローチです。この視点を重視しながら、情報整理・分析を通じて「いま提案すべきこと」に優先順位をつけ、接点をとり続けることが、CISには求められます。
では、CISの導入によってどのような成果が期待できるのでしょうか。ここでは、当社のCIS支援において、CSだけでは拾いきれなかったニーズの発掘や、休眠状態にあった顧客への再提案によって、受注機会を生み出した実際の事例を紹介します。
たとえば、ある企業では導入から1年以上が経過し、商談機会が減少していた既存顧客に対して当社のCISが再アプローチ。PoCとして新たな機能提案を行ったことで、全社展開の契約につながったケースもあります。
- PoC提案の件数が導入前比で2.5倍に増加
- アップセル成功率が約30%向上
- 失注案件への再アプローチ成功率が40%に到達
これらの結果は、「提案の機会がなかった」「拾いにいく機能がなかった」状態にCISが加わることで、大きな変化を生み出せることを示しています。
CISの3つの展開パターン──“縦にも横にも”広げる営業の打ち手
エンタープライズ企業のように、部門が縦割りで独立性が高く、複数の関連会社を持つ企業では、“プッシュしなければ広がらない”構造的な壁が存在します。そこを突破するのがCISの役割です。
セールスリクエストでは、次のような3つの展開パターンでCISを設計・支援しています。
1. 既存部門へのアップセル・クロスセル特化型
主に既存の契約部署を対象に、契約拡張や新機能の提案などを行うモデルです。更新前のタイミングで課題ヒアリングを実施し、アップセル・クロスセルのきっかけを意図的につくりにいきます。
あるSaaS企業では、CISが契約更新の2〜3ヵ月前から提案準備に入り、CSとの連携で追加ライセンスの受注に成功。更新率の改善と契約単価の向上につながりました。
2. 別部門への横展開型
同じ企業内の別部署(例:人事→経理、営業→企画など)にアプローチし、サービスの利用拡大を図るモデルです。これまでCSだけでは踏み込めなかった部門間の壁を越えて、キーパーソン特定・新たな提案機会の創出を担います。
ある企業では、初期導入部門での活用実績をもとに、CISが社内の他部門へ仮説提案を展開。さらに、既存ユーザーと他部門担当者が自然につながるようユーザーイベントに関連部門の関係者を招くなど、接点設計を意図的に行うことで、複数部署への横展開を成功させました。
3. 関連会社への横展開型
企業グループ全体に視野を広げ、関連会社・子会社への営業展開を行うモデルです。とくに縦割り組織の多いエンタープライズ企業では、親会社と子会社で決裁構造が分かれていることも多く、各社ごとに独立した提案プロセスが求められます。
このモデルでは、アカウントマネージャーとCISが連携しながら、どの会社にどのタイミングでアプローチするかをあらかじめ設計。既存の利用実績や導入部門の声をもとに、「導入済みの信頼」と「スモールスタートのPoC提案」というふたつの軸で商談を構築していきます。
“1社のLTV”ではなく“グループ全体のLTV”をとりにいく
CISの最大の価値は、「すでに導入実績のある顧客」の中にある未開拓ゾーン(別部門、関連会社)に営業起点でアクセスし、広げていける点にあります。
グループ企業への横展開を進めるうえで有効なのが、「すでにグループ基準のセキュリティ要件をクリアしている」という状態です。大企業グループでは、情報セキュリティや契約審査の要件が共通化されているケースが多く、1社での導入実績があることで、他の関連会社に対してもスムーズに導入障壁を下げられるという大きな強みになります。
このように、技術的・契約的なハードルをあらかじめクリアした状態の既存顧客の“隣”に立ち、的確な仮説と丁寧な接点設計で各社へ展開していくことで、「グループ全体でのLTV最大化」が成長戦略として描けるようになります。