インサイドセールスは、顧客の負担を減らす
近年、BtoBマーケティングにおいて、インサイドセールスに対する注目は急激に高まりつつある。本セッション冒頭でも横山氏の問いかけに対し、参加者のおよそ6割がインサイドセールスもしくはオンライン商談をすでに実施していると挙手した。隆盛の理由として横山氏が語るのが、顧客における購買プロセスの変化だ。
「時代やツールの変化によって、顧客は実際に問い合わせをする前に、認知、検討といった購買プロセスのうち67%を終えているような状況になっています。それに合わせて、営業スタイルにも変化が求められているんです」(横山氏)
また、これまでのBtoBセールスにおいては、提案書、見積書、比較書、そして契約から契約後のフォローアップまで、すべてのプロセスをひとりの営業担当者がフォローするのが一般的だった。しかし営業支援システムやマーケティングオートメーションが発達し、情報共有が容易にできるようになり営業活動は細分化。そんななかで生まれたのが、インサイドセールスという新たな営業方法だった。
相手先まで足を運ぶフィールドセールスとは異なり、社内で完結するインサイドセールスは、通常、業務効率化・生産性向上・移動コストの解消といった文脈で語られることが多い。しかし、横山氏は、インサイドセールスの発達は何よりも「顧客のため」に効果的であることを強調する。
「こちらから営業に出向く場合、会議室を押さえたりお茶を出さなければならないなど、顧客に負担をかけるばかりでなく、直近でミーティングを設定できずに顧客が早く情報を得ることができないなど負の側面があります。インサイドセールスを活用することによって、顧客の負担を軽減し、スピーディなビジネスを実現していくことができるんです」
また、インサイドセールスは大きくふたつのタイプに分かれる。ひとつは分業型におけるインサイドセールス「顧客を温め、営業にパスする部隊」だ。マーケティングのチームが、ウェブの広告や展示会、セミナーなどで自社に興味を持った見込み客のリストを獲得してくる。その後、すぐに訪問営業を行うのではなく、インサイドセールスがサービスの紹介やヒアリングを行って、温度感を図ったうえでフィールドセールスにパスするというもの。もうひとつは「営業活動そのものを行う部隊」でクロージングまでをオンライン商談システムのみで行うタイプだ。
「とくに顧客の会社に対しては、ベルフェイスをはじめとしたSales Techを活用し、インサイドセールスのみで契約まで結んでしまうことも珍しくありません。商材の単価や商圏などの条件によって、どこまでインサイドセールスを活用していくかについては大きく異なっていますね」
インサイドセールスが解決するもの、ベルフェイスの取り組み
続いて横山氏は、インサイドセールスが解決するふたつの課題を紹介。ひとつめは「マーケティング・セールス間の溝をなくす」こと。ベルフェイスも当初はマーケティングとセールスのふたつのチームしかなかったため、グロースハックやマス広告などによってリードは大量に獲得できているものの各見込み顧客の温度感を図り切れずに、注力すべき顧客に集中することができない時期があったという。インサイドセールスチームという顧客の状態をヒアリングし、商品の説明を行うチームがマーケティングとセールスの間にできたことで、適切なリードの振り分け・対応が可能となり受注へ結びつくようになった。
もうひとつは「リードタイムの圧倒的短縮」である。前述の取り組みを通して、受注までのリードタイムが大幅に短縮されたという。
では同社のインサイドセールスは現在のどのように運営されれているのだろうか。横山氏がマネージャーを務めるインサイドセールスは現在、SDRとBDRというふたつの組織に分かれている。SDRは中堅中小企業向けのインサイドセールスチームで月に約1,500ほどのインバウンドリードを5名で回しているという。BDRは大企業向けのチームでまだ立ち上げたばかり。専任はひとりということだが、ターゲット企業の営業部長へ手紙を書き、そのあと秘書宛に電話をしてアポをとるという取り組みにチャレンジしている。
分業制で案件を創出し続ける同社だが、そのなかで非常に重要なのはマーケティングやセールスチームにも通じる「共通言語」をつくることだという。同社では、リードランクを下記のように3つに分け社内で共有している。
また各チームごとに設定されるKPIの達成も必須だ。SDRのKPIは「有効商談数=検討開始した(セールスチームのヨミに入った)商談数」で、BDRはアポイント数で設定されている。BDRの場合は、大企業対象でアポイントメントが先の日程となることも多いため、まずはアポイントメント数で成果を図っていくとのこと。
KPI管理には、Salesforceのダッシュボードを使用し1日3回リアルタイムで日次のレポートが送付されるようにしているという。数字が達成できていないときは横山氏がメンバーにヒアリングを行い、状況の改善を日々重ねている。
録画・録音機能で営業育成も Salesforceとの連携でさらにパワーアップ
自社でもインサイドセールスチームのPDCAを回し、さまざまな挑戦を続けるベルフェイス。同社はどのようにしてインサイドセールスを支援しているのだろうか。
これまで、Skype、ハングアウトなどさまざまなWeb会議システムが生み出されてきたものの、これらはそもそも社内会議用として開発されたシステム。そのため、相手先のデバイスにもアプリのインストールやIDの作成といった煩雑な作業が必要となっていた。しかし、ベルフェイスの場合、商談相手はインストール、ID作成といった作業が一切不要で、インターネットに接続できる状況であればすぐに使うことができる。さらに、資料のダウンロード機能、共有メモ機能、画面共有機能などを実装し、法人向けの営業に必要な機能が詰め込まれている。
また、横山氏によれば、ベルフェイスによってもたらされるのは、営業活動の効率化、生産性の向上のみではない。ベルフェイスを使えば営業担当者の育成まで行うことができるのだ。
「訪問営業の場合、営業責任者が部下の商談に同行しなければ適切なフィードバックをすることができず、商談内容はブラックボックス化しやすいですよね。しかし、ベルフェイスならば録音・録画ができ、商談内容がすぐにデータ化できます。営業責任者も、自席に座った状態で部下の商談をチェックし、適切なフィードバックを与えることで営業スキルを伸ばしていくことができるんです。とくに、人の入れ替えの多いIT業界などでは、即効性のある人材育成ツールとしての役割も期待されていますね」
ベルフェイスの場合、IDを持っている社内メンバー全員が録画データを閲覧できる。新卒、中途の営業研修として録画データを活用し、人材育成においても効率化を図っている導入企業も増えているという。
「営業チーム全体が録画データを確認してアドバイスをし合うことによって、チーム全体のスキルを底上げをすることができます。また、録画された商談は1.5倍速で再生できます。これまで、商談内容のフィードバックを行う場合、移動時間を含めて2時間で1商談しか確認することができませんでしたが、ベルフェイスなら2時間で8商談分の確認も可能になるんです」
さらに、Salesforceとの連携機能も実装され、ベルフェイスを使った商談は自動でSalesforce上の活動履歴に追加される。「どの段階でベルフェイスを使って商談をしたのか」「ベルフェイスを活用し受注できたのか」「業種別の商談実績」といった情報もリアルタイムで把握できる。営業を熟知したベルフェイスは、商談現場、スキルアップ、情報共有など、網羅的に営業活動をサポートしてくれるのだ。
セミナーの最後、横山氏は「勘と根性で行なう営業する時代は終わった」と強調する。
「もちろん、インサイドセールスが発達しても訪問営業がゼロになることはないと思います。しかし、営業活動の一部にでもインサイドセールスを活用することで、営業生産性は飛躍的に向上していくはず。次世代の営業を一緒につくっていきましょう」
インサイドセールスによって集められたセールスデータを活用することは、これまで属人性が高かった「営業」という要素を因数分解し、次の進化を生み出す一助となっていく。ベルフェイスをはじめ、すでにそのためのテクノロジーは整った。次の時代は、これらのSales Techをうまく使いこなせるか否かにかかっているといっても過言ではないだろう。