「アドバイザー型」へのシフトが拓く新たなチャンス
宮下 現在の金融機関、とくに銀行におけるビジネスマッチングは大きく2種類あると考えています。ひとつは、金融機関が準備したプラットフォームの中で各企業が能動的にマッチングする「プラットフォーム型」です。自然発生的にマッチングが生まれる一方で、各企業の知識や姿勢に依存する部分が大きく、銀行員による価値提供が弱くなってしまう側面があります。
もうひとつが、お客様との間に担当行員が入り、課題をうかがって解決策となるサービスを紹介する「アドバイザー型」です。行員の価値を発揮できる一方で、担当行員の知識やスキルに依存するという側面があります。この5~10年ほどはプラットフォーム型が優勢であった結果、担当行員がサービスの内容を深く理解できていないケースもあると思いますが、いかがでしょうか。
今原 プラットフォーム型で思い浮かぶのが、地方銀行が地域の企業を招いてパーティーを開き、経営層とつながってもらう方法です。しかしこの方法は、情報が膨大かつ複雑な現代においてニーズや効果が薄れているように感じます。また、地方銀行が地域の特産品を販売するホームページを作成する方法もありますね。訴求先も地元の企業となってしまい、他地域への展開や情報収集には向きません。
これらの状況を踏まえて、今後はアドバイザー型がトレンドになっていくでしょう。セールス・イネーブルメントが注目されている今、感度の高い担当社員の行動やスキルを標準化することが、新しいビジネスチャンスになると思います。

財徳 ビジネスマッチングとはつまり、企業の課題を解決するソリューションを提供することです。とくにデジタル領域はさまざまなサービスがあります。プラットフォーム型では、たくさんある選択肢の中から自分で最適なソリューションを探す必要があるため、意思決定が難しくなります。今後のビジネスマッチングは、アドバイザー型をベースにして金融機関が企業のニーズに合った最適なソリューションを提供するということが重要になってくると考えています。
宮下 この点について、「ビジネスマッチング業務における課題」もうかがいたいと思います。ビジネスマッチングが進まない要因を調査した結果、「そもそも紹介できるサービスを把握していない」が1位となりました。我々の調査でも、メガバンク、地方銀行、信用金庫の皆さんに「今、自行で紹介できる企業のサービスを把握していますか」とたずねたところ、全体の86.7%、支店勤務に限定すると100%が「把握・理解できていない」と回答しています。
財徳 ポータルサイトやフォルダの階層が深く複雑になり、日々の営業活動で忙しい中、欲しい情報になかなかたどり着けないケースも多いようです。これも、自行の取り扱い商材を把握できていない要因のひとつではないでしょうか。

今原 私も営業担当時代を振り返ってみると、自分の数字を追うことに集中し、ほかの支店が何をしているか、どのサービスの提案が多いかまで目が向かなかったのが正直なところです。自分から先輩や上司に質問することはできても、銀行全体の横断的な情報をすべてキャッチアップできるわけではありません。パッシブに情報を受け取れる仕組みがあれば、ビジネスマッチングに限らず、金融機関によるすべての提案がブレイクスルーするでしょう。
宮下 私も自社のサービスを金融機関の皆さんに販売していただいていますが、A支店で取り扱い数が増加しても、B支店には波及しないという難しさがあると感じています。情報をどのように広げていくのかは、まさに課題のひとつですね。
あっという間にお時間になってしまいましたので、本セッションはここで終了といたします。皆様ありがとうございました。