今求められる、金融機関のビジネスマッチング
宮下(パートナーサクセス) 最初のテーマは「金融機関におけるビジネスマッチングの立ち位置」です。まずは3つの調査結果をご覧ください。ひとつめは、約500件の金融機関を対象に実施した、施策別の取り組み状況です。2023年度と2024年度の両方において、90%以上の金融機関が「取り組んでいる」と回答したものは3つしかありません。相続・事業承継、創業支援・起業家教育、そしてビジネスマッチングです。
次の調査結果は、2024年に金融庁が発表した「企業が認識している経営課題」のレポートです。実は借入のニーズは約1割しかなく、企業の課題は、人口減少や高齢化に伴う労働力不足など複雑化・多様化していることがわかります。
3つめも金融庁による調査で、今後企業が金融機関から受けたいサービスと、それに対して手数料を払っても良いと回答した割合です。今後企業が金融機関から受けたいサービスのトップは取引先の紹介、つまりビジネスマッチングであり、35.9%が「手数料を払っても良い」と回答しています。
これらの調査結果からは、企業が抱える課題が変化し、金融機関に対してビジネスマッチングを強く求めていること、ほとんどの金融機関がビジネスマッチングに取り組んでいることがわかります。一方で、ビジネスマッチングへの熱量は金融機関によって差があると感じています。この点について、おふたりはどのようにお考えでしょうか。
今原(あおぞら銀行) 調査結果を見て非常に強い示唆を感じました。いまや企業のニーズは融資ではなく、人材不足などの課題に対する情報提供・支援を求めています。これは金融機関に在籍するすべての社員が考えなければならない問題です。

株式会社あおぞら銀行
法人営業統括部 ITソリューショングループ グループ長
今原 北斗氏
2005年あおぞら銀行入行、主に法人営業及び個別プロダクトやサポート部門に従事。DX領域に興味を持ち社内研修に参加した後に約3年前に法人営業統括部内にITソリューショングループを立ち上げ、G長として法人部門のデジタル化領域に従事。
今原 ビジネスマッチングに対する熱量の差は、ふたつの要因が考えられます。ひとつは担当者個人の資質によるものです。財務分析の仕方など融資のノウハウはある一方で、DXをはじめとする新たなテーマに馴染みが薄い担当者が多いのが現状です。
もうひとつは組織文化の問題で、金融機関には「自分の取引先の情報をほかの社員に教えるなんてもってのほかだ」という文化が根強く残っています。情報の管理には長けていますが、把握や活用の度合いにはばらつきがあると言えます。
財徳(B Spark) さきほどの調査では「IT・デジタル化支援」という項目が、「今後金融機関から受けたいサービス」「手数料を支払ってもよいと思えるサービス」のどちらにも上位にランクインしており、デジタル化について根強いニーズがあることに驚きました。B Sparkでは、スタートアップが提供するデジタルサービス(主に企業向けSaaS)をビジネスマッチングによってDXに課題を持つ企業に提供することで、スタートアップのBiz-Devと企業のDX推進のふたつを支援しています。DXにおけるトランスフォーメーション(変革)のあり方は企業によってさまざまですが、その基盤となるIT化やデジタル化はどの企業でも共通して必要となります。DXとデジタル化は厳密には違うのかもしれませんが、そこであまり悩まず、まずは積極的に提案することが大切だと考えています。