Box Japanの「先手必勝カレンダー」
宮田 マネジメントとイネーブルメント、2軸のアプローチがありますが、Box Japanさんのエンタープライズセールスはかなり面白い仕掛けを展開されていますよね。
佐藤 マネージャーがリードするとは言いましたが、営業が7~80名にもなってくると品質がばらついてくるところもあります。そこで、共通化や底上げの仕組みを用意するために5年ほど前からセールスイネーブルメント組織を立ち上げていて、マネージャーと連携しながらあらゆる施策をデリバリーしてもらっています。
ずば抜けた営業というのはやはり数名いて、その人の1年間の動きを明示した「先手必勝カレンダー」という施策もあります。各クオーターで行うべきことを詳細に記していきます。
宮田 命名が素敵ですね。おふたりの経験してきた外資系企業だと、グローバルでの型や育成プログラムもあると思うのですが、日本独自のカスタマイズも多いのでしょうか。
佐藤 MEDDICのように共通で使う型はあるものの、日本の商習慣に合わせたものをつくっています。
遠藤 Tableauの場合は世界共通のベストプラクティスがあり、それを日本でも活用していました。アカウントプランは当然各企業に合わせてつくるものの、それだけでは自分たちのプランがうまくいっているかがわかりません。そこで、ベストプラクティスと比較しながら、イネーブルメントチームを交えてできていないことを明確にしていくというフローができていました。

強いチームをつくるマネジメントのスタンスとは
宮田 ここまで理想的な組織のあり方をうかがってきましたが、一方でこの理想を実行していくときの壁も大きいと思います。最後のテーマは、マネジメントとKPI。実行=強制的なマネジメントを想像する方も多いと思うのですが、そうではない取り組みをおふたりはしてきていらっしゃるので、マネジメントのスタンスをうかがわせてください。
佐藤 「be a leader,not a boss」という言葉を大切にしています。周囲をリードせず、目標が達成できなかったときに「バックアッププランは?」とだけ聞くようなマネージャーにならない。誰よりもいちばん汗をかき、現場を助けるリーダーになってほしいと伝えています。
それができていない場合は指摘しますし、内部昇格を大切にしている結果、マネージャー同士のつながりが強固で、組織を超えてほかのチームのメンバーの商談をマネージャーがサポートするようなケースもありますね。
私は5つの会社を経験していますが、中には本当に怖い軍曹がいて(笑)。恐怖政治の中で、筋肉はついたものの、やはり長居しようとは思わないんですよね。中長期で強い組織をつくるために、心理的安全性を担保することはかなり意識しています。
遠藤 自分自身が強面のマネージャーだった話を冒頭でもしましたが、引き出しがなかったゆえの当時の振る舞いを本当に後悔しています。営業担当者からやり直して、その後あらためてマネージャーになったときは、きちんとしたマネージャーになろうという思いを持ってグローバルの研修に臨みました。

遠藤 研修では、「会社のミッションとは別に自分のチームだけのコアバリューをつくりなさい」と言われたんです。そしてそのコアバリューに関するストーリーを半分は自分が語り、残りの半分はそれを受けてメンバーに考えて発表してもらうように、と。実践してみたところ、数字をつくれただけでなく、私自身がアジア最優秀マネージャーになることができたんですよね。APACの代表から、「遠藤のチームは数字も強いけど、メンバーが辞めない。リーダーのためにやっていこうという思いを持っている」と言ってもらえました。