エンタープライズセールスとしての経験
宮田(SalesZine編集部) 「エンタープライズセールスにまつわる誤解」「エンタープライズセールスの育成・組織づくり」「実践のためのKPI・マネジメント」という3つのテーマでお話をうかがっていきます。エンタープライズセールスへのかかわりをふまえて、それぞれ自己紹介をお願いします。
佐藤(Box Japan) 新卒で富士通に入社し、実はその後に移ったサンマイクロシステムで遠藤さんと一緒に働いた経験があります。Salesforceをはじめ、SaaS系の外資企業でエンタープライズセールスの経験を積み、いまに至ります。

1996年、富士通株式会社に入社し、営業としてキャリアをスタート。その後、サン・マイクロシステムズでの経験を経て、セールスフォース・ドットコム(現:セールスフォース・ジャパン)、サクセスファクターズといったSaaSベンダーで様々な業界の顧客に対するサービスの全社導入を支援。2014年、Box Japanの創設期に参画し、日本市場の開拓や西日本などのセールス組織の立ち上げをリード。営業本部のトップとして、日本企業・組織のDX実現に向けて支援に取り組む。2020年2月より現職。慶應義塾大学総合政策学部卒業。
遠藤(アットラスト) 佐藤さんと出会ったサンマイクロシステムが私にとっては最初の会社でした。最初はパートナーセールスを経験し、その後エンタープライズセールスとして金融業界を担当。良い会社は買収されるものです。オラクルという会社に買収されたタイミングで上司が転職してしまい、若くしてエンタープライズセールス組織の部長となり、最初の壁にぶつかりました。
その後、エンタープライズセールスとして足腰を鍛え直そうと入社したのがTableau Japanで、ふたりめのエンタープライズ営業として入社しました。良い会社は買収される法則で(笑)、今回はSalesforceに買収され、結果として執行役員というポジションでエンタープライズのお客様と向き合っていました。現在は起業して、私自身がエンタープライズ営業を育てるようなことにも取り組んでいます。
宮田 遠藤さんはかなり若いころにマネジメントの経験をされたんですね。
遠藤 あえて若い人間をあげようという方針のもと、32歳のときに抜擢されました。目標を達成してもらうための引き出しがなく、厳しいKPI達成に向けて“強面の営業マネージャー”をやっていました。あまり、愛されていなかったと思います。
佐藤 私は現場経験が長く、マネージャーになったのはBox Japanに入ってから。42歳のときでしたね。
エンタープライズセールスの「接点づくり」のポイント
宮田 早速ひとつめのテーマに「エンタープライズセールスにまつわる誤解」に進みます。SalesZineでも、エンタープライズセールスへの注目度の高まりを感じています。一方で、巷にはいくつか誤解があるのではないかというお話がおふたりとの打ち合わせでも出てきて。まずはその点を紐解いていきましょう。
よく寄せられる質問のひとつは「顧客との接点づくり」。エンタープライズセールスにおいても、いわゆる分業型、マーケティング主導で接点をつくることが有効なのでしょうか。
佐藤 マーケティング起点でリードをつくり、営業がクローズしていくモデルは、SMBマーケットへリーチするときは有効なアプローチですが、エンタープライズの領域にも展開しようとした瞬間、うまく進まなくなるというのはよくある失敗だと思います。分業が定着している組織ほど、「マーケティングが良いリードを獲得してこないから」「インサイドセールスチームが良い関係を構築できていないから」と責任を押しつけあうことになりかねません。
エンタープライズセールスに関しては、ずばり営業主導で「この会社のこの部署のこの方に会いたい」というところまで特定して、アウトバウンドのインサイドセールス(BDR)が活躍する組織をつくることをおすすめしたいですね。