ワンオペどう対応した?
森野 たくさんの受注への対応も難しいので、フォローも最低限ということなんですね。ワンオペでの出展となると、トイレや食事、休憩などはどうされていたのでしょうか?
さわべ 食事は忙しい時間帯は基本的に取らずに、買っておいたおにぎりを飲食スペースでサッと食べて、すぐ戻る感じですね。自分でも驚いたのですが、トイレはスイッチが入るとあんまり行きたくならなくて、おそらく数回しか行っていません。水分もあえて控えめにしていましたが、集中しているとそうなるんだと思います。
森野 意外とワンオペ展示会ってやれてしまうんですね。
さわべ そうですね。途切れないレベルでブースに人が来るわけでもないので。
森野 初めて少人数で出展する場合に、これだけは準備しておいたほうが良いポイントがあれば教えていただけますか?
さわべ 「ポスターをつくりましょう」「リーフレットを用意しておきましょう」といった情報はたくさんあると思います。それらはもちろん基本中の基本として重要です。
そのうえで、目的を明確にしておくことが大事だと思いますね。どこまでの成果を「よし」とするのかを事前に決めておかないと、何となくふわっと出展して、結果的にふわっと終わってしまう可能性がありますから。
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森野 リード獲得なのか、引き合いの創出なのか、それとも受注に直結するのか、目的はいろいろありますから。そのあたりがしっかりしていれば、意外と低予算でも、東京の大きな展示会に出展できる。 さわべさんのように営業スキルがある方なら問題ないと思うんですけど、営業や接客の経験がない方がブースに立った場合、ファーストコンタクトはどんな感じでいくとうまくいくと思われますか?
さわべ 「これをやれば絶対うまくいきます」という方法はありません。先ほどの繰り返しになってしまいますが、最低限「何を伝えたいのか」「どこをゴールにするのか」を明確にしておくことが大切ですね。そのサービスやプロダクトの認知度にもよりますが、「何をやっていて、どういうことができますよ」という基本的な説明は、コンパクトに話せるようにしておくと自然と含まれてくると思いますし。
森野 展示会に出展する礼儀というか、セールスできる体制と準備がないと来場者のみなさんにも失礼ですしね。
PDCAも回せる ワンオペ出展は……アリ!
森野 実際に出展してみて、小さい会社や地方で活動している方が1~2名で展示会に出るのって、やっぱりアリだと思いますか? たとえばビッグサイトみたいな大きな展示会でも。
さわべ 何を「成果」と定義するかによりますけどアリですね。取引に結びつかなかったとしても、たくさんの方々とお話ができたり、私のように検証したいことがあった場合には、とてもコスパの良いやり方だと思います。
森野 検証したいというのは、「こんなサービスをやろうと思っているんですけど、どうでしょうか?」といったものだったのでしょうか?
さわべ そうですね。いろいろな訴求軸で「こういう表現だと反応はどうかな?」といったことも試してみました。当たって良い感じの反応が返ってくる人もいれば、そうでもないケースもあって、自分の中でチューニングしながら進めていた感じですね。
森野 ダイレクトにわかるから早いですよね。
さわべ ひとりでPDCAを回す感じでした。「これ、良い感じだな」と思える部分もありましたし、今回のポスターの訴求メッセージも悪くなかったと感じています。次にもし出展する機会があれば、もっとうまく立ち回れるんじゃないかなと思いますね。
森野 次回があればひとりで出展されますか?
さわべ 展示会はひとりでも可能なんですが、いろんな方向からいろんなお話を聞いて、事業としては「自分ひとりではやりきれない部分があるな」と改めて実感しました。自社で組織をつくるのか、他の方とパートナーシップを組むのか、いろいろな方法が考えられると思います。今は、そういった選択肢を考えてみてもいいかなと思い始めたところですね。
森野 量というか多くの経験をすることによってわかってくることってありますよね。
さわべ うまくいくタイミングというのは、「ラッキー」や偶然の出来事が飛躍のきっかけになることがあります。私自身もそうした経験がありますが、振り返ってみると、それはただの偶然ではなく、実は必然だったのではないかと思うんです。
「これ以上やれることはない」というところまで地道に愚直にやりきった人だけが、その偶然を必然に変えられるのではないでしょうか。結局のところ、奇策はなく、地道な努力こそが成功への唯一の道だと感じています。
森野 本当にやりきった人だけにご褒美がある。さわべさんもワンオペ展示会をやりきったからこそ、気づいたこともあるし、次の展開も見えてきたということですね。今日はありがとうございました!
インタビューを終えて
ひとりで展示会出展しても忙しくて何も得られるものがないのかな? と思っていたのですが、予想に反して得られるものも大きく、できるならやったほうが良いということでした。少人数で出展する=大量のリードに対応できないということなので、その前提で考えれば数よりも質をとることになりますよね。その一方で目的をブラさないこと、ポスターなどは一目でわかるキャッチコピーを入れることなどは共通でした。展示会出展の基本は共通ですが、目的に応じてうまく対応していけば規模は関係ないことがわかったインタビューでした。