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営業はカウンセラーやお医者さんに似ている?
向井 先行きが見えない時代、哲学者による「探究」が有効だと理解してきました。一方で現代の営業を取り巻く環境についても、いろいろと考えることがあります。コロナ禍以降、先行きが不透明な中でさまざまな会社の事業計画が狂いました。そんな時代の買い手(お客様)に対して、売り手側(営業)にできることは特定領域の専門家として、お客様の状況を把握し、解決すべき課題、目指すべき状態について情報提供をしていくことです。私はこの活動が、「営業」活動に含まれると考えているんです。
そのうえで買い手の課題にマッチすれば、自社プロダクトを胸を張って提案すれば良いし、そうでなければ他社のソリューションを紹介しても良い。そうすることで、半年後、1年後に準備が整ったお客様から「検討したいのですが……」と声がかかるはずです。労働人口が減り、企業の絶対数も減る中で、むやみやたらな営業ではなく、こういった関係構築が必要になっているんですよね。
谷川 営業について深く聞くのは初めてなのですが、カウンセラーの仕事に似ていますね。カウンセリングって、本人が課題を特定・解決できるのであれば必要ありません。どこに問題が隠れているかもわからないから、カウンセリングを受ける必要があるわけです。
向井 たしかに。そして、お医者さんのようでもありますよね。たとえば僕のもとに寄せられる経営者の営業に関する悩みトップ3は、「売上が上がらない」「案件数が増えない」「受注率が上がらない」。これらによって収益が思うように伸びないこと。つまり、痛み自体は自覚しているわけです。痛みがある場所はわかっているけれど、原因がわからない状態と言いましょうか。
営業が行うのは、原因追及。そしてこれからそのスキルはより必要になります。原因追及のためには、本音で話せる関係性づくりが必要です。そのためには、言葉遣いや見た目もそうですし、知識がある、変な人ではないと思われることが大事になります。
と、いうのもこれはあくまで「向井的な営業のとらえ方」です。自分の考え方を唯一の正解だと思っていないし、営業に悩む人には別の知識もどんどん獲得してほしいのですが、「営業における知識」はまだまだ少ない。noteやXにあるような「わかりやすい」情報に人が食いつきやすくなっているな……と。話を哲学に戻すと、そういう意味でも、営業の人たちに哲学に触れてみてほしいなと考えているんです。