マーケティングとインサイドセールスの「壁」を生む要因
浜田(immedio) 最初のテーマは「マーケティングとインサイドセールスの断絶はなぜ生じるのか」です。『インサイドセールス業界レポート』では、インサイドセールスが抱える課題の第1位が「ツール活用」、第2位が「セールス部門との連携」、そして第3位に「マーケティング部門との連携不足」が挙げられています。
アメリカではCMOの下にインサイドセールス組織を置く企業も多い一方で、日本では営業部門から派生してインサイドセールス組織が立ち上げるケースが多く、マーケティングとうまく嚙み合わない面もあるようです。その要因として、思い当たることはありますか。
垣内(WACUL) たとえばマーケティングの役割を「リードを獲得すること」と定義すると、リードの基準を引き下げることでも数は増やせます。リードの質についてマーケティングとインサイドセールスがきちんとコミュニケーションできていれば問題ありませんが、一切会話していないような状況では、このような齟齬が生じてしまいます。
浜田 マーケティングとインサイドセールスはプロセスが隣接していますし、会話しないなんてことはないのでは、と思いますが……。
垣内 セールス経験者がインサイドセールスを担っている場合は起こりやすいですね。一方でインサイドセールスがマーケティング管掌だと、今後はフィールドセールスとの間に壁が生じる。どちらに寄せるかというだけの問題です。
浜田 ちなみに、垣内さんはどちらに寄せるのが良いと考えていますか。
垣内 会社のフェーズによります。インサイドセールスから商談が発生することを経験していない会社の場合、マーケティング組織内にインサイドセールスを置かないと始まりません。一方で、ある程度リードが生産されてアポイントが獲得できるようになると、今度は質の問題が発生しますから、フィールドセールス側に寄せたほうが良いでしょう。年に1回くらいの頻度で見直すのがちょうど良いと思います。
浜田 もともとセールスが案件を創出していた企業であれば、リードジェンを担うマーケティングとそれをアシストするインサイドセールスを立ち上げて、その活動が成熟したら、インサイドセールスをセールスに寄せていくというイメージですね。マーケティングとインサイドセールスの連携について、栗原さんはどうお考えですか?
栗原(才流) 原因を考えたとき、マーケティングとインサイドセールスの間でKPIなど数値的な認識がそろっていないことはあまりないと思っていて。どちらかというと、受注やカスタマーサクセスにつながるターゲット像が定義できていないことが多いと思います。
浜田 BtoBにおけるターゲティング精度の向上や、マーケティングとインサイドセールスのすり合わせはどのように進めると良いでしょうか。
栗原 BtoCとBtoBのもっともわかりやすい違いは、BtoBは顧客数が少ないことです。一部をのぞいて、ターゲットとなるのは約500社~1000社という企業がほとんどでしょう。それらがどのような企業なのか、解像度を高めなければいけません。
業種や売上、部門ぐらいの粒度だと足りなくて、さらに役職や利用中のツール、課題、自社を認知してるかどうかまで細かくしなければならない。切り口は企業によってさまざまですが、これはマーケティングが主導すべきですね。ただ、詳細な情報になればなるほどマーケティングではわからないものが多い。そのため、実際に顧客と相対するフィールドセールスやインサイドセールスと密に会話していくことが重要です。
垣内 営業経験がないと、良いターゲットを見てもピンとこないんですよね。インサイドセールスもマーケティングもこのリードはいる、いらないといった乾いた情報だけではなく、「今日受注したのは、あの企業のあの人だ」という粒度の会話ができる。そのレベルの顧客解像度があってはじめて、ターゲティングは成り立つんじゃないでしょうか。