複雑かつ高額な商材で力を発揮する「チャレンジャー」
現在、伊藤忠テクノソリューションズの金融事業グループで人材の採用・育成を担当している五十嵐氏。25年間営業畑で、日系や外資、ベンチャーから大手までさまざまな場所で経験を積んできた。
「営業としての最初の転機は、キーエンスに入社した新卒1年めのときです。営業成績最下位という本当にポンコツな営業だったのですが(笑)、なんと2年めには1位になる経験をしました。知識や経験が少なくても、きちんと学ぶことで誰でも営業成果を出せることを伝えるべく、日々仕事をしています」(五十嵐氏)
伊藤忠テクノソリューションズは非常に多くの商材を抱えているシステムインテグレーターだ。1万社の顧客に対し、1,460名ほどの営業が約300社のソリューションを提案している。顧客のあらゆる課題に応えることができ、販売機会が増やしやすいメリットがあるが、営業の難易度は非常に高くなるうえに、属人化しやすいという課題もある。
そのような営業課題に対する自社の取り組みを紹介する前に、セッションのテーマである「チャレンジャー・セールス・モデル」について解説がなされた。
「アメリカの調査会社が6,000名の営業の行動を分析し、営業を5つのタイプに分類しました。従来BtoB営業において良しとされてきたのは次の図の左上に示されている『関係構築型』です。お客様の内部にも味方をつくり、誰とでもうまくやれる人が分類されます。ところが、この調査では、継続的に業績を挙げるのは右上の『チャレンジャー』だと明らかになったのです」(五十嵐氏)
チャレンジャー型が得意とするのは、顧客のビジネスを理解したうえで、必要であれば顧客に変化を求め、強く働きかけることだ。
さらに商材別にハイパフォーマーを分析したところ、単純かつ少額な商品の販売であればどのタイプでもある程度成果を挙げられるが、複雑かつ高額な商品となると圧倒的にチャレンジャーが強く、従来の関係構築型の営業だと成果を出しづらいことが見えてきた。
チャレンジャーには「指導」「適応」「支配」という3つの行動特性がある。指導は顧客へ気づきを与えること。適応は、さまざまなステークホルダーの合意形成を助けていけるということ。支配は、BtoBの複雑な購買プロセスの中で起こってしまう進捗の停滞をうまく乗り切るように働きかけることだ。理想的なスタイルではあるが、実践は容易ではない。そこで五十嵐氏は、これらを自社で実践するためにどう動くべきかを考えた。