営業組織が迎える転換点とは? 現代のマネージャーが抱える課題
冒頭木村氏は、多くの営業組織が「商品中心型営業」から、顧客を中心にした「課題解決型営業」へ転換を求められていることに触れた。同時にコンスタントに業績が伸び、営業組織が拡大する中で、必要にかられてマネジメント能力が未熟なメンバーがマネージャー職へ昇格する現象も起きているという。
「メンバーのパフォーマンスを引き出しきれない──。組織拡大において、そのようなひずみを感じている企業は増えているのではないか」と木村氏は指摘する。
実際に、行動量を担保するマネジメント能力に長けたマネージャーは多いものの、受注率や客単価の向上といった質的な面の改善は難しい課題として残りがちだ。メンバーにスキルを定着させるための体系化やマネジメントを得意としていないマネージャーも多い。
「売れるチームにするために、メンバーにはたくさんの経験を積み、失敗を通じて学んでもらうしかない部分もあるでしょう。しかし、足下の業績目標も高く、商談に同席して細かな指示やアドバイスをしないと目標に届かないため、なかなか手離れせず業務量に頭を抱える方も多いのではないでしょうか」(木村氏)
目標達成のプレッシャーが高い中、マネージャーがマイクロマネジメントに陥ることで、チームのモチベーション低下や効率性の喪失が発生し、最悪の場合、優秀なメンバーの退職につながってしまう。
解決のためには、マネージャー自身がコーチングや研修を通じて新たなマネジメントスキルを習得し、「メンバーの自律」を促すことが重要となる。組織の目標達成に向けた効果的なマネジメント手法が確立されることが、営業組織の健全な成長につながるからだ。
マネージャーになるのは「損」?
曽山氏の呼びかけで、ウェビナーの参加者からはチャット上で営業組織の課題について多数の声が上がった。とくに目立ったのはマネージャーとメンバー間の信頼関係の問題だ。メンバーに対する信頼の不足からマイクロマネジメントへと陥り、結果的にチームのパフォーマンスやメンバーのモチベーションを低下させていること、メンバーの育成に必要な時間を確保できないことなどへの懸念が挙げられた。
曽山氏は、「肌感として、マネジメントの難易度が上がっていると感じる」と指摘する。一般企業の調査でも管理職はやりたくないという声は増えており、「やったら損だ」という意識を持っている人も増加傾向にあるそうだ。
しかし、マネージャーには全体を見て仕事をし、大きな決断ができるという面もあり、いちプレイヤーとしての業務とは違った面白さがある。曽山氏自身も、役員としてマネジメントに関わる中でその面白さを非常に感じるという。
組織としてはまず、マネージャーを志す人が増えるように魅力を伝えていくことが求められる。たとえば、新規事業や事業改善案に取り組むことができるようになり、それによってどう評価が高まるのか、マネージャーが得られるものを見せなければいけない。そうしてはじめて、手を挙げる人が出るというわけだ。