「選択肢の広がりを歓迎しよう」
Zoomがハイブリッドワークを導入した背景
──今回は、グローバルに事業を展開するZoomから見た「営業を取り巻くトレンド」をおうかがいし、日本の営業組織が今後の戦略を立てるためのヒントを紐解いていきたいと思います。
まず気になるのが、コロナ禍以降の「営業の働き方」のトレンドです。2023年7月には御社も「ハイブリッドワークの導入」を発表され、オンラインコミュニケーションツールを提供するZoomが出社をとりいれたことが話題になりました。この変化の背景に、どのような考えがあったのでしょうか。
そもそも弊社は、日々の業務、採用、基礎教育すべてをZoomで行っており、「オフィスがない」状況でした。しかし、コロナ禍に社員数が約5~6倍に伸び、パンデミックが明けてお客様がオフラインに回帰し始めたことで、オフィスがないことによる弊害が生じてきたのです。
たとえば「お客様にデモをお見せしたいのに場所がない」という問題が生じました。また、お客様から「オフィスはどこ?」「営業はどんな人か?」「社長の顔を知らない」といった声が多く届くようになったのです。このような反応は、人々が直接的な対面の重要性を再認識している証拠だと思います。そこで2022年7月に東京でもオフィスをつくり、ハイブリッドワークを導入したというわけです。
もちろん弊社だけでなく、幅広い業界で対面でのコミュニケーションの重要性が再び高まってきているのを感じています。昨今は、オンラインと対面のバランスをとることが新しいトレンドになってきているのではないでしょうか。
──実際に顔を合わせて話をすることは、Zoomでのコミュニケーションとはまた違った感覚がありますか。
やはり対面には対面の良さがあり、人間的な感覚を持つことの大切さを実感しますね。Zoom Meetingsでは挨拶のあとすぐに本題に入りがちですが、実際に相手とリアルで会うと雰囲気の違いなどを感じ、思いがけないところから会話が生まれることもあります。
また、同僚とすぐに対話ができるようになったことも効率性を高めています。社員の満足度に関するサーベイを実施したところ、「オフィスでのコラボレーション環境が向上し、人との距離感が縮まった」という声が多く寄せられました。オフィスでの物理的な接触がチームの結束力を高め、より良い協力関係を築くことに貢献していると感じています。
──対面のコミュニケーションは「人と人との関係性の構築」において、やはり重要なのですね。
そうですね。とはいえ、対面もオンラインも一長一短なので、どちらかに偏るのではなく、状況に応じて適切なコミュニケーション手段を使い分けることが重要でしょう。我々は週に何日出社するように取り決めたり、出社日をチェックしたりはしていません。ハイブリッドなコミュニケーションを大事にしながら、お客様に会った帰りに会社にも立ち寄って少し顔を合わせようという方式が、弊社のハイブリッドワークです。
我々は「コミュニケーションの民主化」と言っているのですが、リモートワークの浸透による最大のメリットは「選択肢が増えたこと」だと考えています。「日本ではおそらくパンデミックがなかったら今のような形態にはならなかっただろう」と経営者の方々とお話しすることもありますが、企業にとっても経費削減につながりましたし、より多くの時間を創出できるようになりました。人間にとっても、企業にとっても“心地良い環境”が創出されたのではないかと思います。
そのほかにも、見渡せば近年はさまざまな「選択肢の広がり」が見られます。たとえば、テクノロジーの進化やAI活用もそうですね。選択肢が広がるということは「新たな可能性をもたらす」ということですから、歓迎すべきことだと思います。Zoomも世の中のトレンドに合わせてAIなど最新テクノロジーを実装し、あらゆるシーンに対応すべくアップデートを繰り返しています。これらのアップデートを通じて「多様な選択肢」を人々に提供していきたいという思想のもと、我々はテクノロジーによるイノベーションを提供しています。