組織づくりの中で言語化できた「コアコンピテンシー」
ここまで富士通が2020年から挑んできたインサイドセールス組織(デジタルセールス)立ち上げの軌跡について共有してきました。最終回となる今回はまとめとして、組織づくりのコツとこれからのチャレンジについて共有します。
社内外で40名以上の新規採用を行ってきた結果、「カルチャーフィット」を最重視すべきだと気づかされました。「早く成果を出すメンバーを採用したい」という思いがある一方、ビジョンに共感してくれるメンバーでなければ、これからの組織づくりを担ってもらえません。
当初から、「Quick Win」のために外部ベンダーとの協業も進めてきましたが、コールメンバーを社員化して良かったポイントもたくさんあります。社内のシステムに無理なくアクセスでき、データの一元化が容易なことはもちろん、初回訪問への同席などを行う際も営業とのワンチーム感がよりつくりやすいと感じています。会社状況や製品情報の機微を掴みやすいのも、社員の強みだと感じます。
また、採用活動の中で溜まってきた知見を基に、自分たちの組織にフィットする人材を判断するための11のコアコンピテンシーや質問リストを制作しています。中でも大切にしているのは、「自律的」に動ける人。自分に求められているものは何か、何がいま組織に必要か、それを自分で考えられる人は、活躍しやすいチームだと思っています。
加えてコーチャブルであることも大切です。富士通内においてまだ型のない仕事だからこそ、会社から取り立ててトレーニングコンテンツなどを提供されるわけでもありません。よって他者の意見をきちんと聞き入れることが自己成長につながります。そして、指導を行うマネージャー側においても13のマネジメントコンピテンシーという指標を用意しました。常に前向きに物事を受け入れるように、「可能思考と楽観主義で臨む」「自責思考で向き合う」などの項目があるのですが、デジタルセールスのマネジメントに求められるものは非常にハイレベルです。
ファーストラインのマネージャーは、自分の配下のメンバーをどう育てるかに注力しがちですが、組織全体で目指していることにも目を向ける必要があります。とくに立ち上げ当初の少ないメンバーには「どうにかこの組織で成果を出すぞ」という思いがありましたが、100名を超える組織に成長するなかで、そのあたりが少し薄まりやすくなっているのも事実です。
組織として目指す成果から自分たちの行動を逆算できる組織であり続けるためには、イネーブルメントチームを含めたほかのチームのマネージャーと連携することが欠かせません。ファーストラインのマネージャー起点で、縦・横・斜めのコミュニケーションを行うことも始めています。
メンバー、組織、成果、すべてに向き合うのはたいへんですが、相互理解が進まなければ、もっと大きくなっていくことはできません。たとえば、組織が大きくなるにつれ「虎の巻」をつくる必要があります。一方で、受け取る側には「型にはめられている」「自由度が低くなる」と思う人も出てくる。決してそういうわけではなく、同じ方向を向くために最低限守るべきベースラインですから、その時々に最適化しながら理解してもらわなければなりません。なぜなら組織はつくって終わりではなく、発展・継続しなければならないからです。